Modern English metaphrase of THE SEVEN SAGES OF ROME (MIDLAND VERSION)
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[参照] ミッドランドバージョン対訳の前に

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1985年 卒論ローマ七賢物語(サウサーンバージョン)より

橋 泉

第五物語始まり

アンシラス師は去り、皇帝は部屋で手を絞り大声で叫び泣き濡れている皇妃を見出して
勇気を出すように言うと、皇帝の名誉がだめになり穀物の上に雑草が生えるのを見たからには
"... bi Adam and bi Eue, ( by Adame and by Eve,  アダムとエバに従って別れねばならない)
と答えた。次の二行連句
"Put þe out of kinges sete
And sette him stede inne þine,"
(Put out you of king's seat   王座から貴方を退け、
(And seat him in stead of you,  貴方の代わりに彼を王位につける)
は、seat the king's seat と考えると dream a dream : 夢見る のような同族目的語の構文といえる。
しかし現代の辞書には、seat a seat 例文は載っていない。

子が父の首を便所[下水道]に投げ込んだ重罪の事例は、
"Hit shal þe rewe bi heuene kyng"
(It shall you grieve by the King of heaven,  神かけて皇帝を悲しませる) と言い、
彼女は妻として誤り導く意図で物語を始めた。

皇妃の第五物語

 かつてこの町の富裕で有名な皇帝 Octouien,(Octavian?)オクタビアンが、
Cressent, クレセントの塔を造り貯えた金銀を置いた。ローマにいた七賢人のうち五人は国外に、
二人は国内で正しい裁判をしてローマを守っていた。
吝嗇家が皇帝の財宝を守ることになりその御採用に対して彼は昼夜精一杯職務を遂行していた。
原文の二行連句表現は by を繰り返し三度用いて大変簡潔で分かりやすい。
And he hit kept bi all his miӡt, ( And he it kept by all his might, )
Boþe bi daies an bi niӡt, ( Both by days and by night,)
現代英語の辞書成句表現では、
with all his might : 力の限り、全力をあげて、  day and night : 日夜、四六時中、
by day : 昼間に、日中、    by night: 夜分には、夜にまぎれて、 etc.
だが、この中期英語二行はそのままでも現代に通じる生きている言語である。

もう一方の寛大な心の持ち主の学者は彼の息子を起こして鋤を取らせ 今宵、彼らは塔に出かけ、
穴を開けてその中へ入り運べるだけの財宝を奪った。
(He said to his son "take a pike,)
"To niӡt þe schalt wiӡ me strike" (Tonight you shall strike with me; )
今夜お前は私と一緒に塔に向かうのだよ)
このシーンでは strike という語彙の解釈が膨らむ。
作者にしてみればただ単に pike: (鉾、槍など、)との脚韻語だとしても。

朝、見張りの学者はそれを嘆いたが三重否定語で考えた。 { 以下順を追って原文を抜き出しながら}
"He ne made no pleint to no man, (He not made no complaint to no man,)
彼はそのことを誰にも訴えなかった。
何故ならば、
"Wolde come aӡen eft." (Would come own again.)
再び戻って来て白状する奴に相違ない。  
"For þef of steling wil nowt blinne," ( For thief of stealing will not cease,)
泥棒は盗み終えていないのだから。

 研究社、新英和大事典  で wise man を参照すると
『 wise man 名詞 賢人 ★ しばしば皮肉に fool の意に用いられる 』 という解説があるが、
第五物語にはその典拠と思しい行が次のように連なっている。( 現代英語 )

Þe  wise man dede make a dich ( The wise man did make a ditch )
賢人は溝を造らせた 『金子健二訳本は賢人でなく賤しい心の貴族 』
Ful of lim and of pich, ( Full of limb and of pich )
木タールとピッチを一杯詰めて
Þat ӡif he aӡen wald come, (That if he would come again,)
もし彼が盗みの現場へ再び来たら
Þat Þe traitor sscholde bi nome. (That the traitor should be name.)
その逆賊を名指しで非難しよう。
Þe stolen catel ispended is, (The stolen cattle is spent,)
盗んだ家畜は尽き果てる、
Þe wise bicomeӡ a fol ,iwis. (The wise becomes a fool, certainly.)
賢人は愚者になった、確かに。

またさらに諺を調べると、
A fool and his money are soon parted  の訳はつぎの二通り。
『 ばかに金を持たせるとすぐ使ってしまう。研究社 新英和大事典
『 ばかの持ち金をだまし取るのはやさしい。三省堂 カレッジクラウン英和辞典 

[2016追記
ローマ七賢物語の内容が辞書例文と一致するような時それは文学的な価値なのかそれとも 単に語彙や成句的、文法的価値なのか、確かなのは脚韻の並びだけは美しいことである。 そして現代の発音記号のような綴り字 ӡ  が頻出する。
]

ある夜、クレセントタワーに忍び入った親子のうち父親が溝の中に飛び込み金切り声で叫び、
息子は助けを呼んで来ようとしたが、
".......mak þer of no ӡelp." ( make there of no help.)
.....逃げ道はない。
.........................
For sikerlich ich am ded." ( For securely I am dead.)
確実に私は死んだように動けない。と言った。
語彙 siker-liche は、Old High German: 古期高地ドイツ語借入語である。
その現代英語 securely は、安全に、確実に、しっかりと、恒常的に、の意の副詞、
また、dead は、死んだではない。

"A, leue father, what sschal i do?" (Oh, dear father, what I shall do?" )
嗚呼、父上、私はどうしたらよいのですか?
そう困惑する息子に汝の刀で首を切ってくれと命じた。
息子は、
"Nai arst mi lif scholde me bi bireued, " (No, first I should rob me of my life,)
いいえ、まず私の命を奪うべきですと拒んだが、
"Sikerliche, sone, hit mot so be, ( Securely, soon, it must so be,)
Oþer ich and tou and alle mine ( Otherwise I and you and all mine )
Beӡ ischent wiӡ out fine. ( Both disgrace without end. )
確実にすぐそうしてくれなければ
さもないと我と汝そして我が一族
皆永久に名を汚されるのだよ。と説得した。
子は父の首を切りそれを携えてそこを去り隠し場所を探した。
But als he com by a gong ( But also he come by a privy )
Amidde þe pit he hit slong, ( Amid the pit he it slay [strike].)
しかしさらに彼は便所の側に来た時、
穴の真ん中にそれを投げ捨てた。

原文中の gong は、、O.E.古英語 gang この一つの語が持つ意味は、
walk, 歩く、 act of going,  行き来する行為、 gang,  非行集団、暴力団、 troop, 軍隊、
passage, 通路、 privy, 屋外便所、 sewer, 下水道、 など多様である。
文脈からすると便所でフランスの小説的下水道ではない。

A morewe ( A morning) 翌朝見張り役の貴族が見た者は、
And seӡ þer stonde ane heuedles man, (And see there stand an headless man,)
そこで立っている首のない男だった。
He loked bifore and bihinde, (He looked before and behind,)
彼は前後を検査したが、
Knowleching ne couþ he finde. (Acknowledging not show he find.)
彼の知人であると示す事の見分けがつかなかった。

彼は、落とし穴からから引き出した死体を頑丈な二頭の馬車でローマまで引き回し
泣き悲しむ者がいたら死んだ自由民の一族であろうから、何時でも彼の面前に突き出すよう
命じていた。宮殿から馬車が来ると、

Þere was cri an wail a wo, (There was a cry a wail a woe, )
Of broþer and of suster al so. ( of brother and of sister also.)
悲痛に叫び号泣する
兄弟と彼の姉妹もいた。
この二行連句において三つの語によって悲嘆を表現している。(現代英語)
cri は、O.Fr.古期、中世フランス語借用語:
(cry: 泣く、嘆く、叫ぶ、等)
wail は、OldIceland 古期アイスランド語借用語 
(wail: 大声で泣くこと、聞こえるように悲しみを表す等  woe と関連している語)
wo は、ME辞書 w 第一番目の見出し語 wa, wei,  O.E. 古英語=アングロサクソン語
(woe : 大災害、大不幸、深い悲しみ、
 感嘆詞: Woe is me !  ああ悲しいかな!、 Woe be to... ! に災いあれ!
他には、『 a natural sound of grief :  The New Webster Encyclopedic Dictionary of English language
この解説を詩的に訳すと自然の悲しげな音、 物悲しい自然の音、という意味で、それは日本の英語の辞書
なら見出し語 wail に載っている解説 『風・サイレンなどが悲しい音を立てる、むせび泣くような音
を出す、 コアレックス英和辞典 旺文社 』 に等しい。)
自分のしたことが恐ろしくなった息子はナイフを抜き身体中を強打した。
その原文の þegӡ の単語が分からない。
And smot him selue þourӡhout þe þegӡ .( And smote himself throughout the......)

次に抜粋する二行の脚韻は、hide:隠した と cried:叫んだ で、脚韻が先か内容が先か
不詳作者は実に巧妙である。 
Þe kinges seriaunt faste hide, (The king's servant fast hide,)
To nime þat folk þat faste cride. ( To take that folk that fast cried.)
国王の従者は隠れている家に耳を留めた。
しきりに泣く家族を捕縛しようとして。