Modern English metaphrase of THE SEVEN SAGES OF ROME (MIDLAND VERSION)
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[参照] ミッドランドバージョン対訳の前に

K

1985年 卒論ローマ七賢物語(サウサーンバージョン)より

橋 泉

后妃の第九物語

"Uirgil was whilom a clerk" (Virgile was formerly a clerk)
ヴァージルはかつては学者だった。
"Þat coude of nigramancie werk." (That could of necromantic work, 〔necromancy〕)
魔術ができた。
ローマの中央市場で燃やした火は誰も水で消せず国中の貧乏人の手足を暖めていた。
そして城の最も奥深く最強の塔の側に真鍮の像を鋳造した。
大弓を手に握り矢を放とうと身構えている像で、その額に「私を打つ者に直ちに矢を射返す」と黒インクで 書いてあるのを見た気高き一人のロンバルド人は、
"To loke what he do can?" (To look what he can do?)
彼に何ができるか見てなさい? と町の人達に言って彼を打つと、
"Þe ymage fell to grounde" (The image fell to ground)
彫像は地面に倒れてしまい、
"Þe, fir aqueinte for euere mo, " (The, fire quench forever more,"
その火は永遠に消えてしまった。
......................................................................
しかしヴァージルは、東門と西門に黄金のボールを持つ兄弟のような彫像を鋳造し
ローマの人々曰く、
"Þat on hit hente þat oþer hit þrew, (That one hit catch that other it throw,)
一人はボールを投げもう一方の人はそれをキャッチしてボール遊びをしているのだ。
ローマ市中央の舞台上に造った手に鏡を持つ他の像は、七日里程内を日夜監視し謀反の時には
ローマ人達をたちまち ("in a stounde"=in a moment) 集めて直ちに( "a non"=at once)そちらの方の敵を滅ぼさせたのだった。

この要約部分には「平和と戦争」の単語peace , battle の一行が収まっている。
"Who wolde pes, who wolde bataile " (Who would peace, who would battle) 和訳は誰が平和、戦争、 or  誰が味方となり敵となるか、etc.
現代ならば戦争と平和、 War and Peace だが、war の 古フランス語 werre ではなく bataile なのは 次行・・・ faileと脚韻 ...aileを踏むためと思われる。
全編に共通要素は、内容の明暗を問わずリズミカルな詩行の連続である事。
"About Rome seuen Jurneys" (About Rome seven days'work)
"Þous he warned niӡt and dais, (Thus he warned night and days,) etc.
戦争以外でローマ人を羨んだポイル王(The King of Poil)は、彼の苦情の原因を彼の国の賢人達に話した。 巧妙な像を倒すことの報酬に金銀で満たした二つの櫃を二人の学者に与えて富裕の都市ローマへ行かせた。
彼らの旅は俄だったが、ローマ入りするとボールを握っている像の東門と西門の下に金櫃を一つずつ埋めた。
(鏡を持つ像の盲点だったのか誰も知らなかった。)
"Þat oþer forcer ful of gold (That other chest full of gold) 他の金櫃を
"Þai bidoluen in þe mold" (They dig round in the mold) 彼らは地面を丸く掘って埋めた。
この2行連句は、上が目的語下がSVMの構造型である。
"Amorewen þai sschewed hem in Rome "(A morning they showed them in Rome)
朝、ローマに姿を見せた彼らは、皇帝クラッスス(Cressus=Crassus?)の面前に参り、
貴殿の国に隠された財宝の話題になるとローマ皇帝は、
"Ich haue forlorn þat eueri grot," (I have lost that every groat,)
自分もすべて金銀を失い一文なしになったところなので、
"Þat ӡe mai finde wiӡ ӡoure vertu," (That you may find with your virtue, )
"þe haluendel in alle þigge." (Then halve in all things.)
汝らの善意で見つけたなら財宝の半分を与えると言って埋蔵金発見に早速取りかかろうとした。
しかし
"Ich mot mete a sweuen to night," (I must meet a sleep or I must dream a dream tonight,)
"And to morewen , what hit is liӡt," (And tommorow , what it is light,)
私は今夜睡眠をとらねばならないと兄貴分が、明日、夜明けまで滞在を求めた。
"Þus þai were þat niӡt still." (Thus they were that night still.)
このようにして彼らはその夜静かに滞在した。
 原語のsweuen =sweven には、sleep, 眠る、dream, 夢を見る、の意味があるために、
mete=meet を動詞 dream にすれば 同属目的語 I dream a dream の古風な表現法
Joseph dreamed a dream. ヨセフ夢を見たり  研究社新英和大事典第六版740ページ
との一致を見る。従って正しい訳は私は夢を見たにちがいない。
同2591ページ tonight
【廃・方言】 昨夜(last night) I dream'd a dream tonight. 昨夜夢を見た。(cf.Shak.,Romeo 1.4.50)

翌朝すぐにサークラッサスは東門へ行った。(当時眠気と闘いながら書いてたので I must sleep となってしまったらしい。
二人の学者は東門の土を掘り金銀に満ちた金櫃を見出し皇帝に与えた。
西門に埋めた金櫃を発見する前の台詞は、
"Amorewe þe ӡonger said well euen " (A morning the younger said well even)
ある朝弟分が、兄文と同様に言った。
"Sire, to niӡt me dream a sweuen" (Sir, tonight I dream a dream)
サークラッサス殿、今宵私も夢を見ました。
"We sschalle finde ate west ӡate." (We shall find at west gate.)
我らは西門で見つけるでしょう。
"Quik, went þider þemperour" (Quick went theither emperor)
速くそちらへと皇帝陛下をその朝急がせて彼らが埋めた金櫃を掘って献上した。
"Þan swor þe eldere, "Bi blod and bones" (Then swear the elder, "By blood and bones)
それから、兄文が血と骨にかけてと誓約した。
"Have ich to niӡt imet ones," (I have tonight dreamed one more dream,)
昨夜私はもう一つの宝を見つける夢を見ました。
"Is no richer fram hennen to helle." (There is no rich man from heaven to hell.)
天国から地獄まで陛下ほどの金持ちはいないと言ってから、
"Þai ӡede to bed and risen amorewe" (They went to bed and rise morning)
二人は寝室に行きそして陽は上る。

天国から地獄までという表現は、数行前の ”In al þe werld"(In all the world) 世界中でと共に
七賢物語の説話の一面である。しかし説話とは何かの答えとして物語は、鏡を持つ像の下に
ヴァージルの財宝(彼らが埋めてない)があると続く。登場人物ポイルの二人の学者の新しい発言である。
彼らの所持する財宝と策略の範囲外にある真の策略は、皇帝陛下が銀貨を失ったという発言を受ける
ような虚構性を持ち神話や聖人伝説とも区別される作者の強い確実性を有して不自然に感じさせない。
その展開はしかも二人の学者のポイル王命令、偶像破壊に直結するある種の因果応報
『 人間の思考、行為の善悪に応じてそれ相応の報いがあること、、、』 的に
クラッサス皇帝殺害に至るのである。ポイル王は、ローマに階級の戦いを生じさせたのだ。
ローマ皇帝は、像を破壊しないように石工達に命じて像を柱で支えた。
石工達の仕事ぶりは以下の4行詩で表現されている。
"Þai to rent ston fram ston " ( They rent from stone to stone) 
彼らは石から石へと引き離していった
"Þe fondement to brast anon." ( The foundation to brass at once)
敷石にはめこんだ真鍮の基礎までたちまちに。
"All dai þai mined down riӡt" (All day they dig a mine down right)
その日中ずっと彼らは一生懸命に鉱石を掘ってはくつがえした。
"Til hit come to þe niӡt." (Till it come to the night.)
夜が来るまで。
"Whanne ech man slepen, greteand smale," (When each man slept, great and small,)
身分の高い人も低い人も各人が眠った時、
"Þe clerkes to þe;e stage stale," (The clerkes to the stage steal,)
ポイル国の二人の学者は足場に忍び込んだ。
火をつけるとセメントと石が落下し鏡を持つ像は崩壊した。
翌朝皇帝は起き、..............................................
"Awai he wolde han iflowe." (Away he would have flown.)
『 彼は逃げ出したかったのだ。』
ローマの人々は皇帝クラッサスをテーブルに縛りつけその鼻、口、耳、目に溶かした金を
"Þer whiles a drope wolde in go," (There while a drop would in go.)
一滴でも入る限り流し込み
" for godes loue," ( for god's love)
神の愛により
"Þou hast mad þral þat was aboue." (You have made slave that was above.)
汝は上層部の人を奴隷にしたのだと言って殺した。
原語 aboue が何を示すのか不明だが、金子健二氏訳は、
 昔は自由の身分であった者が奴隷にされたのだと・・・・・・・
クラッサス皇帝の誤りは、二人の悪事の仲間を信じたことにあり、
"Sir, swich sschal be ending þin." (Sir, such shall be ending thine.")
そのような末路は汝だと皇妃は忠告した。
"ӡf god wile," (if god will.)  もし神の御意思ならばと答えた皇帝に、
"bi riӡt skile," (by right reason)  と相槌を打ち、
皇帝の後継者は皇帝に恥を与える憎むべき子であると説き、
"Riӡt to morewe he sschal forþ fare."
(Right to morning he shall forth fortune.= I will let him forth fortune.)
朝までに王子の先の運命を決めさせた。
 構造型 (文型)
SV 17,   SVC 7,  SVO 32,  SVIODO 1,  VS 3,  SOV 8,  OSV 4,  VSO 2,
新訳ミッドランドバージョン、MIDLAND VERSIONと比較

第十物語始まり

 翌朝、皇帝は怒った顔つきで起床して彼の宮殿に直行し、男爵ら家来の面前で息子を勘当するとして
王子が牢獄から出た時、ローマの真ん中へ Catoun、カトン師が騎馬で参上した。
師の弟子の救出にはカトン師の学問が必要なのだと泣く人々に囲まれて皇帝にひざまずいた。
王子の言葉は失われたと言う皇帝に対して、王子は以前の陛下の情けを見出すと否定し、
皇帝は、自由民とカササギの不名誉な事件を聞く間の猶予を与えて王子を監獄に戻した。

カトン師の話した第十物語

 ローマの町に美貌の裏面は偽りで
"And hadde a parti of Eue smok." (And had a party of Eve [evil?] chemise.)
Eve の肌着の乱痴気騒ぎパーティーをした妻を持つ大資産家の商人がいた。
広間に懸かる美しい籠の中には
"Þat couþe telle tales alle" (That could tell tales all)
"Apertlich, in freinch langage," (Manifestly, in french language,)
明白にフランス語を使って話しをすることがすべてできる a magpie カササギ (parrot オウム)
がいて行ったり来たりする情人の事を直ちに主人に告げた。