Modern English metaphrase of THE SEVEN SAGES OF ROME (MIDLAND VERSION)
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[参照] ミッドランドバージョン対訳の前に

R

1985年 卒論ローマ七賢物語(サウサーンバージョン)より

橋 泉


そこに客人のように重んぜられた一人の男がいました。
あたかもラテン語韻文詩を朗読するその呼び名はジェーナス(Gense)、ジェ二ウス(Jenius)、又は
ジュリアス(Julius) と言い、ローマがサラセン軍に包囲された時代にこのジュリアスは権謀術数に 長けた七人の学者の一人で、彼は数多の技能を駆使することができました。
それがために人々は彼の名前にちなんで1年の中の一つの月をJanuaryと命名しました。
January、一年の最初の月、ヤヌス神に捧げられた月、
Janus: 『ローマ神話、(双面神)、ヤヌス 【前後に顔を持ち 左手に鍵右手に笏を持った神、日出日没をはじめ一切の事の
初めと終わりをつかさどり、門や入口を守護した。】  研究社新英和大事典、1313ページ参照引用 』
January はこのJanus ヤヌスに由来するが定説であるけれども、ローマの七賢物語第13物語にも由来説が描かれた。
現代、Janusfaced は、裏表のある、二心のある、という良くない意味にも用いられることがある。     

彼は彼が着るブラックインクや熊の毛皮のように真っ黒な衣服を作らせ、その衣服にリスの毛皮の尻尾を縫い付けました。
多勢に無勢、間違いなく、
彼は、前後に二つの顔のある一つの仮面を作らせました。
仮面の両半分に二つ鼻を持ちその目は地獄の悪魔の相の現れのようでした。
その仮面の口から垂れた舌は火炎に包まれて燃える真っ赤な石炭の熔解。
彼はオスマン帝国の皇帝に使者を立てました。
直ち回教君主スルタンは応答しました。「我々は皆戦いの準備ができている。」と。
そしてローマの人々も直ちに召集されてジュリウスは戦闘準備を命じました。
彼らは誰にも劣らずと答え用意万端整ったに相違ありませんでした。
朝になるとジュリアスは塔に行きました。それは高く聳えるクラッスス、我々の高い城壁を連ねる塔
の中で最も高く強固な塔でした。そこからサラセン人達に彼の姿を端から端まで見せるために。
それから彼はピカピカの一つの鏡を作らせました。
彼は栗鼠の尾をもつ黒衣を身に着けて塔の上に登り立ち上がってから仮面を被りクリヤな鏡を
固定しました。彼が二つの剣を抜き放つと素早い小競り合いをして剣を横ざまに払うのが見えました。
と同時に大音をたて矢継ぎ早にきらきらと輝かせました。
その光景は巡礼装束の一人の王が大軍をすべて殺してしまえと奮闘しているようでした。
サラセン人達はこの不思議な予兆を見て驚愕し戦いを仕掛ける知恵が働きませんでした。
鏡に映る彼はあまりにも大きなうなり声を上げたので、サラセン人の誰もが絶えず恐怖におののき
その鏡によって彼らが思ったのは、それは十字架上で死んだ神なのだ、塔にいる悪魔だ、
果ては救世主イエス(Jesus)なのだと。
サラセン人達はみな恐れをなして逃げ出し、あえて城外に踏み留まる勇気ある者はいませんでした。
ローマの城門が開かれるとキリスト教軍が一斉に門外へ出て逃走するイスラム教軍を追撃し、
皇帝とその市民乃至奴隷は、未知数のサラセン人の大半を殺戮しました。(be ix and x = everyone)
その戦場で多くの黄金と武器を分捕る程の勝ち戦となり、この賢きジュリアスは彼の手腕を振るって
ローマを救ったのでした。その結果彼は拝められ名誉を獲得しその後ローマ皇帝と相成りました。
皇帝になった年の最初の月は聖Rycher により彼の名Junyus, Julius, Genus,を取って
Janyuer, Jenyfere, Julyer, janyvere, 一月 January(英語) janvier(フランス語)と名付けられました。

1985年 卒論下書き原稿
昔、ローマは七人の回教君主 'seuen soudans' (seven sultans)<F.heþen kynges[heathen kings] 
異教徒王>に城壁と城門を囲まれた。seint Pster 聖ペテロの城門を陥落させてキリスト教徒'crysten
men'(Christian men) 或は 'All cristyn '(All Christian)を殺害しようとする君主達"þem"
(them)にローマ人は反抗した。
"The people of Rome ageyn þem helde" (The people of Rome against them held)
 対句の一行目の主語キリスト教徒をCrystydome (Christendom)「キリスト教国、
全キリスト教徒」としたB版は、二行目で ’The men of Rome it behelde'  
三人称中性代名詞 it を目的語としたためにローマ人は何を守ったのかという問題を投げかけた。
上記 them は、against によって ”seven soudans”七人の邪教信者の王を指し、それらに
率いられるそれぞれの軍をも考慮させ、ローマ軍との戦いの場の一行だと早合点しがちだ。
"The men of Rome" に対して "sarasyns" サラセン人の意の単語は、ローマ人を指すþem の
次の行にはじめて登場するのである。
再考すると、町の壁、城壁と門は、”Both”で示され、”The honour of Rome” を滅ぼすためにと
詩行を連ねて、接続詞 and でつなぎ
E版 'And for to strwre seint Petres sate’(And for to destroy Peter's site)
B版 ’And the paleys of seynt Peter also’ (And the palace of saint Peter also)
Ar版 ' And for to fell seynt Peters gate’ (And for to fall saint Peter's gate)
F版 ’And for to felle seynt Petur gate’ (And for to fall saint Peter gate)
 と都市を描き出す。
Christian クリスチャン、キリスト教を信じる人々は、この後出てくる単語で前記の問題の提示
となった。  simple な連想では、it はペテロの城門である。
聖ピエトロ大聖堂 [伊]Basilia di San Pietro in Vaticanoは、345年に完成した
五廊式バジリカ式建築であった。現存するのは 15〜17世紀の建築で『ブラマンテによって十字形の
プランが成りラファエロが採用した。』  
B版の the palace of saint Peter は、カトリック総本山のキリスト教聖堂、聖ペテロの「宮殿」
と解釈できる。
 聖堂を破壊してキリスト教徒を迫害することは、ディオクレシャン帝の時代に余りにも自然な宗教
政策として連想しにくい。ペルシャ人との戦い、回教国軍包囲を防ぐためにと書き出した第十三話こそ
対ペルシャ戦争、十字軍遠征、ローマのキリスト教などについて暗示させるような七賢物語の虚構性
が表出している。すなわち、’The men of Rome it behelde’四種で目的語 it が一致し、この町
’þis þe town’を ”To keep it from destruction” 滅亡から守るために七賢人を選んだ。
どんなローマ人もサラセン人(the saracenus, etc. modE.the Saracen)を恐れて
城門から出なかった。 冒頭から数ページ後、文書によればという七賢物語の常套句行が使われる。
【中世の文書によれば文】
A版 ’As we findeӡ in þe writ.’   ( As we find in the writing.)
E版 ’As we fynde it boke jwrytte.’    ( As we find it book written.)
Ar版 ’From all harme so saiþe þe wryt.’   (From all harm so said the writing.)
F版 ’Fro all harme, þus seyth þe wrytt;’  (From all harm thus said the writing;)
A版は、我々が文書で見るところによれば 
E版は、我々が書かれた本でそれ(it)を見るところによれば
Ar,F版は 、文書がかく言うあらゆる危害から


書物によれば一ヵ月 ( a month , or all a month) 守った。
【中期英語の月末文, 時のit】
A版 "Whan hit com to þe moneӡ ende," (When it come to the month end,)
E版 "Whenne hit come to the monythe ys ende," (When it come to the month is end,)
B版 "When it com to þe moneth ende," (When it come to the month end,)
Ar版 "Whene it come to þe moneþis ende," (When it come to the month is end,)
F版 "And when hyt came to þe monyþs ende," (And when it came to the months end,)
   月末が来ると
と皇后は言葉を継ぎ彼女の物語中の七賢人の一人Jenius(Julius)が巧妙な策略を用いてローマ皇帝と
なった話を始めた。食糧が尽きると、Junyus は黒衣のりすの毛皮を着て、前後二つの顔と鼻真っ赤な
燃える石炭のような仮面を被り最も高い塔に鏡を据えてその上で二本の剣を大軍と戦っているように
抜き放った。
"And þei answerd with þe best," (And they answerd with the best)
原文のidiom "with þe best" は、現代英語では、with the best, 最高の、劣らず、
であるが他の版と比較すると
E版、"And they answeryd alle in haste," (And they answerd all in hast.)
B版、"The sowdan answered anon: " (The sultan answered at once:)
大急ぎで、直ちに、彼の宣戦に応じた回教君主とサラセン人達は音をたてる鏡のジュリアスを見て、
十字架刑で死んだ神、悪魔だと考え城外に退散してローマ軍に殺された。
その年の一月を人々はJanyuer, Julyer,[January] と呼んだ。

次の例は語順の考察である。(Ar版)
S + V + O  

"He ӡode hym vpe, verament,"(He went him up, {vraiment, フランス語})
彼は登った、本当に、
S省略 + V + IO + DO

"And dide hym on his garnement, " (And did him on his garment,)
そして彼の衣服を身に纏って
S省略、V省略、IO省略 + DO
 
"And eke also his vesour," (And in like manner also his visor,)
そして同様にまた仮面を被って、
 V + S + V + Adverb Phrase(副詞句)

"And seþe he lokyd in þe myrrour." (An saw he looked in the mirror.)
そして見た彼は鏡をのぞいて。
新訳ミッドランドバージョン、MIDLAND VERSIONと比較

以下続く第14物語は逐語訳の前に万年筆下書き原稿から記す。

"hyt fareth be hty wyse" (it goes by wise) ディオクレシャン皇帝の七賢人によって行われると
忠告した皇后を 第七番目の師Maxencyon(Maxione)マキセンシアスは、彼女自身の助言と意思によって
皇帝を公正でもなくまた慈悲深くもなくさせる明白な不貞であると述べ、王子が話すまでの後一日
の猶予を求めて第14物語を始めた。

マキセンシアス師の第14物語
 ある夜夢に見た美しい女性を探して旅に出て三ヵ月後ハンガリー国の勇敢な武士はPoly国に
到着し海岸近くに城(castell; castle)を発見した。
その武士の愛の夢を見た婦人が "suche a dremynge dremyde she"
(she dreamed such a dreaming)
その城主に監禁されている塔を見上げて、外を見下ろした夢の女性がPoly の貴族夫人だと知った。
本国で殺人を犯したと言って滞留を求めた彼は、Polyの貴族の敵を破り塔の側に石造りの私室を
(a chamber of domestic and stone, a rich house) 建てた。
秘密裡に塔に穴をあけ私室と繋ぐ通路を作った遠国の石工を殺して塔に登った彼は、
手紙を落とした彼女の前に夢通りの"of whom her dremying was a nyght"
( of whom her dreaming was a knight) 高貴な騎士の姿で現れ 
"God the kepe fro vvleyne" (God keep you from villain)
「神は汝を悪者から守る」と言って望みを遂げ、
夫人は、"For he shulde thynk hyr vppon" (For he should think her upon)
彼が彼女を思い出すように黄金の指環を与えた。
貴族は、彼の城の広間(the hall)の席上で武士の指にある指輪を見て危ぶみ直ちに(anon, at once)
武士には無言で塔に向かったが、彼女の夫の到着は地下通路を通って行った武士の後、 
"Sone after þat" (Soon after that) {Ar版}
(And soon there) come her lord
夫人は、"I shutt j am from all men." (I am shut from all men.)
「私は家臣たちと会えぬよう閉じ込められた。」と言って訴え、指輪ならばすでにここにある
"hit ys alredy" (it is already) E版 "all redye" ( all ready) B版 "allway redy" Ar版
"here all redy" (here all ready) F版 、、、と武士が投げた指輪を財布から取り出した。
貴族の目は、二つの一致を二つの類似と信じて翌朝塔から降りて直ちに(anon)教会へ行った。