Modern English metaphrase of THE SEVEN SAGES OF ROME (MIDLAND VERSION)
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[参照] ミッドランドバージョン対訳の前に

F

1985年 卒論ローマ七賢物語(サウサーンバージョン)より

橋 泉


バウシラス師の第二物語

 昔、この町で、トリニティー祭 (Trinete, Trinity) 三位一体節に 馬上槍試合が牧草地で行なわれた。 一筋の川に囲まれた荒廃した古い邸宅で、美しい婦人、子供、猟犬を持つ騎士も 鉄製の鎧を着て、首のあたりに盾、手に槍を携えて出発した。 婦人は立ってそれを見、三人の乳母が置いた揺りかごの上を多くの馬が飛び越えて 行った。   壁にいた蛇が子供を殺そうと直ちに地上に這うのを見た猟犬(he) は、蛇 (hire) を襲撃し彼の口で彼女をくわえ強く噛むや否やいったんは逃したものの、揺りかごの の上を動く蛇を捕えた。揺りかごの柱はひれ伏して横たわった子供を安全に支えた。 犬は吠えて出血の痛みがなくなると彼女を寸断した。試合が終わり、人々と帰宅した 乳母達は、夫人に狂犬が子供を殺したのだと話し、夫人は、夫である騎士に犬を 殺さなければパンを食べずに彼女が死ぬだろうと言った。騎士は剣を抜き広間で 尾を振り迎えた猟犬の背を斬りつけて殺し、幾片もの蛇を見て 「このような者は決して 罪から救われない。婦人の申し立てを信じたものが悪魔の水に溺れる(飛び込む)以外に------」 と嘆き悲しんだ。

原文については、
"Ne be þat man neuere iborewe
But in evil water adreint,
Þat euer leue wimmannes pleint"
現代英語訳をする場合否定詞 Ne を脱落させて解釈し
That man is never ranson (=deliver)
But is drown in evil water (plunge in evil water)
That ever believe woman's complaint 

実は、古英語の iborewe という単語の意味が分からなかった。 綴り字から類推すると bear の過去、born ( 耐える、我慢する、)であるが決定打がない。 ranson (人、魂などを罪から救う)或は deliver を選んだのは、 Deliver us from evil : 『我らを悪より救い出し給え』 という成句からだ。 evil ではなく evil water とは何か。 evil water に飛び込んだが evil から救いだし給えのような悪循環的安易な語彙の選択例。

そして次の行は、
原文"I shall mi selve abigge þat wrong"
現代英語: I shall myself pay for that wrong

「私自らの悪の償いをするために罰を受ける」 と、
素足で不毛の森林の中へ入り、悲痛な時を苦しみ二度と戻って来なかった。

"ӡif þou do þi sone vnriӡt"
語順はModE,と同じ 
If you do your son wrong>

 もし貴方が貴方の息子に対し不法を行うならば、 妻の忠告を通じて無罪の猟犬を殺した騎士のような目に会うだろうと バンシラス師が言うと皇帝は、ローマで殉死したペテロ ’bi peter' の名において 或は他の版のラインでは、今(Nou)私が仕える神によりて今日は彼を殺さないと 述べて法廷は閉じた。
新訳ミッドランドバージョン、MIDLAND VERSIONと比較

第三物語始まり

 皇帝は直ちに部屋へ行き、病気の様に悲しむ ( 原文の形容詞 soht: sickness) 夫人は、 皇帝が悪魔と呼ぶ王子に仇を討たなければ、王子は悪事をし、人々はそれを見て話すに違いない。 王子は皇帝を引っ掻いてもらったために死んだイノシシ同様の末路に至らせると言い、 その事例を語り始めた。

皇妃の第三物語

 ここから西方の美しい森林にイノシシが成長していたため、人々は怖がりそこへ入る騎士さえ居らず イノシシは森の平原で熟し始めたサンザシの実を毎日腹いっぱい食べていた。 牧羊者は家畜を囲ったが、そのうちの一頭は広い森林のサンザシの木まで彼を到着させ、 ふところに実を集めた彼の前にイノシシが来た。 気も狂わんばかりに木に登った牧羊者の近くで実を探したイノシシは、彼を見てののしるような 声を出し、牙で木を強打して揺り動かし、鼻で地を直し口から白い泡を流して膝をついた。 牧羊者は、実を投げて右手で大枝からぶら下がり左手でイノシシの背を引っ掻き横たわった後 腹を掻くとイノシシは子羊のように眠り始めた。羊飼いは、長く鋭利なナイフを心臓に刺し イノシシから生命を奪い取った。

原文 "Biraft þe bor of his lif" イノシシの命を奪ったは、 現代英語 " bereft (or robbed ) the boar of his life" と語順が同一である。 bereft の現在形は bereave でその用例は、 『 The war bereaved them of their only son. その戦争で彼らは一人息子をなくした。 または rob の文例 The pickpocket robbed the lady of her wallet.   すりがその女性の財布を奪った。
 研究社 新英和大辞典 より

古英語 Bi は、ӡe, ӡi, i, e, a,  とともに複合語の接頭辞であり、
O.E.raft の不定詞は、reaven , 現代英単語 rob, plunder 略奪するの意味。
ModE:現代英語 の be は、bereave , betake  の形で残っている。
『 [ bi-, prefix, O.E.bi-, mod.Eng. be-,for-- A Middle -English Dictionary] 』
To be(bi) or not to be(bi) that is question は、
The Seven Sages of Rome ローマ七賢物語よりも後の英語である。

皇妃は皇帝に、七人の師達はイノシシである皇帝に虚偽の話をして彼の頭蓋を引っ掻き、 欺いて死をもたらすまで皇帝に毒舌を弄するのだと言った。


[ 2016年追記
この大意部分の一行
Wiӡ fals resoun and wikkede sawes, (With false talk and wicked saying,)
(虚偽の話と邪悪な言葉で) を
ペーパーバック THE SEVEN SAGES OF ROME の 35ページ928行を開いて見直すとB 版では、
wikkede sawes (wicked saying, 邪悪な言葉)が、
sotyll wordes ( plain words, 分かりやすい言葉)となっていて、
王を理解させるための巧みな進言は、明瞭な発音ではっきりという解釈の方がしなやかだと思う。
]

'Til þai þe sly wiӡ deþes glaiue '
Till they you slay with death's sword
deað( death) の属格を用いて「殺人の剣で殺す」と表現し
現代英語 death, be the death of 〜, 死の原因、sword, 死の手段
の語義との関係が見出せる。

第三物語中の一行、
'And he gan sone on knes fo fall'  彼は敵に膝を屈し始めたは、
現代英語の句、 fall on one'e knees ひざまずく と
        bend [bow] the knees to [before]   に膝を屈する、に膝を折って祈る
との対応関係で補い、
And soon he began to fall on his knees before... [enemy,etc.]と古英語を現代英語に置き換えた時、
ME.中期英語期の前置詞と語順についての考察ができる。

これ以上の無秩序なく明日彼を殺す
'He sschal to morewe dai'  {sscahl はキーボードの打ち込みミスではなく中世書字生のスペル例
He shall [I will make him] die tomorrow.
morӡen は、morning 朝、 morrow  明日の意味があり、
明日は、O.E. 古英語の頃から ' to morgen' (next day) と書かれ M.E.中期英語 まで続いた。
新訳ミッドランドバージョン、MIDLAND VERSIONと比較
第四物語始まり

 夜が過ぎ今日が来て皇帝は塔から降り、家臣は城門と広間の戸を開けると貴族たちが 入って来た。皇帝が、彼らの前で王子を何度も打ち、絞首刑の看守と群集の真ん中まで 導いた時、アンキシルス:Ancilles が騎馬でやって来た。敬意を表したアンキシルス に対し、皇帝は「君主に仕えた汝は、悪の報いを受けるであろう。キリストは私を成功させる。」 と言った。 この要約で取り上げたのは、次の原文の行である。


Þou hast iserued wikked mede,
Þou schalt hit haue, so Crist me spede.

現代英語直訳は、
You have deserved wikked meed(または reward),
You shall it have, so Christ me speed ( または success).

逐語訳
汝は悪事の報いに値し、(PC翻訳は、よこしまな人は報いを受ける価値があります
汝はそれを受けるであろう、それだからどうかキリスト様私に成功のほどを。

この二行には、後世のidiom,一定の言い回しとなるような表現が内臓されている。

その一つは 現代の熟語 『 deserve a reward 報いに値する 』 
古フランス語借入語彙 servien は、serve 仕えるの意、
古英語 serven は、 deserve <人・事・行ないなどが>それだけの報いを受けるに値するの意、
本文の訳は、’ deserved wikked reward ’ と形容詞が付き善でなく悪の報いである。
しかし中世本のスペル例は、 O.Fr. servien にも serven と綴られた例があるので二つの違いは
内容から判断しなければならない。
ここでは、serve the Emperor なら deserve a reward だが、 
serve my son だから deserve wikked reward と解釈できる。
もう一つは、
so Christ me speed  という表現が、現代英語の辞書に載っている
『 God speed you : どうか御成功のほどを 』 に あまりにも近似していることである。

ローマ七賢物語においては、皇帝が自分の成功をキリストに祈りそれが後世 他者の幸運を祈る慣用句となったとまでは断定しないが、God は、キリストとは限らず  me は、you になった。