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中世ロマンス作者不詳  ジル ホワイトロック博士編集の和訳
        

  1週間15編の枠組物語集 7日7晩と8日目

     目次


ローマ七賢物語オープニングの長いプロローグ

 1. 第1夜  王妃の第1物語  木

 2. 日曜日  1番目の師バンシラスの第2物語  犬

 3. 第2夜  王妃の第3物語  イノシシ

 4. 月曜日  2番目の師アンシルスの第4物語  医者

 5. 第3夜   王妃の第5物語  財宝

 6. 火曜日  3番目の師レンチュラスの第6物語  井戸

 7. 第4夜  王妃の第7物語  執事

 8. 水曜日  4番目の師マラダスの第8物語  審判

 9. 第5夜   王妃の第9物語  バージル

10. 木曜日  5番目の師カトンの第10物語  鳥

11. 第6夜  王妃の第11物語  賢者

12. 金曜日  6番目の師イエスの第12物語  寡婦

13. 第7夜  王妃の第13物語  ローマ

14. 土曜日  7番目の師マルシアスの第14物語  閉じ込められた妻

15. 8日目  王子の第15物語  予言

A Japanese translation  現代英語ページの和訳

物語始まりの長いプロローグ

a English translation(英訳)

原書の Page3, 1-38
ローマに一人の帝王がいました。
大変名誉となる人物で
書物が我々に物語るところによれば、
彼の名はディオクリシウスと申しました。
全王領を統治しなければならなかったし、
ヘリーと呼ばれていた妻がおりました。
二人の間に継嗣が生まれました。
それはお行儀の良いチャーミングな子供でした。
皇帝とその妻は、
その子供を夫婦の命のように愛しました。
皇帝は次第に年を取りだし、
彼の盛りの時代に考え始めたのは、
大層美しい彼の息子についてでした。
しかも七歳になったばかりでしたから、
皇帝はたいそういやいやながらも、
その子供に学問を学ばさせようとしました。
七賢人を求めて皇帝が、
使いを出すや否や彼らは参上致しました。
それから彼は学者達を呼び出しました。
皇帝の面前に。
大広間の外の部屋の中に
彼は学者達を連れて行き全員に尋ねたのです。
彼らの誰が預かってくれるのかと、
彼の息子を賢人にするために。
  メンバーのうちの最年長者が皇帝に答えました。
その人は非常に信義を重んじる人でした。
彼は白髪の痩せた男で、
その名をバンシラスと申しました。
彼は皇帝に言いました。
「どうかお願いがあります。
御子息を私に委任すれば
陛下はきっと見聞きするでありましょう。
この七年間が過ぎるまでに、
彼は自分で知識を習得するのですが。
天に召します全能の神によって
我ら七賢人と同様に偉大なる。」
  第二の師は
バンシラスほど年を取っていないが劣らず優秀でした。

Page4, 39-76
彼は平和を愛する男でした。
その名をアンシラスと呼ばれていました。
「皇帝陛下よ、もしそう望むのならば、
陛下は御子息を私に預けるでしょう。
陛下の愛のために私は彼に教えます。
彼の心に刻みこむように
この世界中のすべての学問を、
我ら七人の聖職者が知るところの、
このことを私は陛下に約束いたします。
もし彼が私と滞在するならば。
  第三の師は痩せていました。
彼は幸福状態をよく知り
レンチュルスと呼ばれていました。
彼は皇帝にこんな風に言いました。
「陛下、お気にさわらぬように、
かわいい陛下の子供を私に委ねてください。
つまり王子はそこで三年五年を過ごされ
もし彼が気転がきき活発ならば、
王子は彼自身ひとりで学ぶでしょう。
我々各自が知りうる知識を。
  第四の師が立ち上がって話しました。
彼は色白でも色黒(浅黒い顔色)でもありませんでした。
彼は大変赤ら顔の男で、
マラダスと申しました。
「陛下よ。」彼は言いました。「お世継ぎを私に託して下さい。
優れて見目麗しき。
しかし実のところ私は反駁をくわえます。
私の同僚達が儀礼的に誓っていたこと、
引き受けたのは知的課題。
学識ある私の同僚諸君が彼に教授すると行った事に対してです。
しかし私は人間として彼を御教育しましょう。
私ができるも同然に。」
  第五の師は立ちあがりました。
大変有名な知恵のある人でした。
彼はローマタウンで生まれました。
そしてカトン師と呼ばれていました。
彼は言いました。「陛下、確かに
それはまことしやかな事柄です。
Page5, 77-114
陛下が私の同僚たちが研究し熟練した知識を彼に教える、
愚かな行為がなされつつあったのです。
しかしもし陛下が王子を私に任せてくださるのならば、
私は陛下の名誉にかけて
忠実な僕として
できる限り王子に学問をお教えします。」
  第六の師は若い男でした。
髭を生やしていませんでした。
それから言いました。「陛下よ、率直に
王子の世話を私がします。
また私の努力によって御教育も致しましょう。
陛下が後悔なさらぬように。
こういう風に彼は答えたのでした。
その名をイエス師と申しました。
  第七の師はこのように答えました。
マルシウスと呼ばれていました。
「陛下、私は陛下のために善く働いてきたものです。
私が最初に学問を身につけて以来
その日からこの時まで、
そしていつでも私はお仕えしてきました。
私は捧げます、陛下よ、
お願いがあるとしたら
王子を私にお預けください。
私は彼を教育しまた先生の言うことを傾聴してほしいのです。
  皇帝は穏やかな言葉で
七賢人達に心をこめて礼を述べました。
「私が死なねばならぬ滅びまで、
私は諸卿方々を仲たがいさせません。
私は息子を一人の師に預けるわけではないのです。
私は王子を貴方がた皆各自に頼むのです。
ここの大広間と部屋で王子を教育してもらいたいと、
それは諸君すべてに負うていることなのです。」
七人の賢者達は皆一緒に皇帝に感謝の意を表しました。
皇帝は彼らを礼遇して与えました。
七賢人達が保有することも認めたのです。
皇帝が愛するすべての物を十分に。
師達は皇帝に退出の挨拶をしてから
礼をもって王子を連れて行きました。
Page6, 115-152
七人の師達は皆一緒に
王子が教育を受けるための教会会議室へと参りました。
 その時カトン師が言いました。
「もし王子がローマタウンのここに住むならば、
きっとそれは、
王子が見聞きしないことではないかもしれないのですが、
王子が例えば美しい女性と話をしたり振る舞ったりする間にです。
しかも我々は王子が学ぶことを何も教授しないでしょう。
いかにも言うとおり
ローマに住まわせてはいけません。
七人の師達は王子をどこかへ連れて行きました。
そこはローマからどれだけ離れた所なのか私は知りません。
制定して説明するために、
師達が王子に勉強を始めさせる前に、
そこは師達が学問所を建てねばならない場所でした。
王子のための皇帝領
そこで王子は七賢人達から学ぶ事ができて、
誰も下品な言葉を聞きません。
師達は大変公正な学びの場を建てました。
そしてその場所には健康に良い空気が漂っていました。
そこには美しい噴水があり、
美しい木々も影を投じていました。
その中の最も美しい所に
七賢人達は大講堂を建てさせました。
その講堂は他の講堂と違っていて、
寸分たがわず四つの直角をなして囲まれていました。
彼は四方八方に
広くて美しい部屋を沢山築きました。
どの師も部屋を一室持っておりました。
横たわり歩くためにです。
皆一度に造られた時、
王子がそこへ連れて来られる前に、
着手しなければならない最初の課題、
自由七科の絵が講堂に描かれました。
  全部の部屋と講堂が同時に造られた時、
王子はその建物の中へ連れて来られました。
講堂の真ん中に王子の床が整えられました。
王子がベッドで裸で横たわる時、
Page7, 153-190
王子は左右を眺めることができました。
いつでも王子がそうしたい時、
壁の上を王子は見ることができました。
何の科目を勉強しなければならないのだろうかと。
七人の師達は皆王子に仕えました。
王子の父に対する尊敬の気持ちから王子を教えるために。
王子が目を覚ましている間は常に。
一人の師が授業をやめれば他の師が一科目引き受けました。
七年間経つまで。
自由七科のうちで
議論によって王子がよく知らない事はありませんでした。
王子に挑戦できる者はいませんでした。
王子の師達がもうそれ以上教えなくなった時、
王子は彼自身の思考力を学んだのでした。
ある日講堂で、
王子はすべての師達と論争していました。
そして彼らは王子が了解したことを喜びました。
また互いに異口同音に言いました。
「陛下の子供は賢者になりつつあります。
我々は彼がわかっていることをもっと試します。
師達は余念がありませんでした。まもなく
王子が解くことになっているトリックに。
王子のより多くの才能を証明するための。
王子の知恵の深さはどれくらいか。
王子のベッドは高くした台と
籠のような四本の柱で造られていました。
各々の柱の下に師達は敷きました。
学者達彼ら自身が言うように、
四枚づつのツタの葉を結び合わせたものを、
王子の機知の試金石のために。
  朝、夜明けの時に、
その子、王子はそこで目を覚ましたまま横になっていました。
彼は低い所を見ました、彼は高い所を見ました。
そして狂気じみた(おびえたような)目を剥きました。
王子は彼のベッドのすべての方向を
怖がっている男のように見ました。
その時バンシラスがやって来て
王子にどこか具合が悪いのかと尋ねました。
Page8, 191-228
「なぜ殿下はベッドのあたりをそのように見回しておられるのですか?
何か恐れているのですか?」
王子は彼のベッドの中で答えました。
「私は誰も怖くありません。
でも少し私は、
まのあたりに見る物の謎で一杯なのです。」
この家は大変奇妙です。
昨晩屋根が落下したのか
或いは床がより高い水平面に達していたのでしょうか、
私が最後に屋根を見てから。」
「いかにも。」マラダス師は言いました。
「それは不思議な出来事です。
なぜならば決してありそうもないからです。
床が上へ向かって動くなど。
柱は大きくしかも小さく、
どうして屋根は落ちたのでしょうか?
それは決して、
殿下が私におっしゃる事は。」
「神にかけて、先生、私は酔っていません。
もし屋根が下がって来たのでなければ、
また或いは床がより高い位置に達したのでなければ、
私が最後に屋根を見てから、
それならば私のベッドの各々隅の下には四枚の葉が備え付けられていたのです。
それは矛盾してはならない。」
師達は王子ともはやそれ以上長く講堂にいようとはしませんでした。
そしてまた王子をもうこれ以上横たわらせておくわけにもいきませんでした。
しかし間もなく王子はうれしさの余りベッドからはね起きました。
師達は従前通りにベッドを整えました。
師達は各々互いにかく言いました。
「王子は賢い人であります、疑いなく。」
  その王子が学校に行っている間に
彼にひどい事態が起こりました。
エリーという名の王子の母が死んでしまったのです。
我々のすべてが死ぬように。
彼女が死んだ後まもなく
王子の父には別の決断力がありました。
名誉たる高貴な貴族が
直ちに皇帝の下に来て
Page9, 229-266
言いました。「陛下は豊富な王国を持っておいでになられます。
もう恋する女性に求婚なさる時です。
そして第二の妻を娶り
陛下の生活を共にする時です。
陛下には一人息子以外にお子がいません。
さすれば沢山の子供を養えるでしょうに。」
皇帝は好色でした。
だから七賢人達の助言を理解しました。
それからそこに居た貴族全員に言いました。
「諸君、それでは各々方は探し求めに行ってほしい。
私の妻とするにふさわしい一人の婦人を。
そうすれば諸君の忠告をもってして彼女と結婚しようと思う。」
貴族達は彼の同意を確かめると、
彼らは直ちに探しに行きました。
皇帝の妻になる
高い家柄で上品な婦人を。
すべての諸侯達は急いで探しました。
そしてとうとう一人の婦人をみつけました。
簡単にそれを知らせると
皇帝はどうしても遅らせずに
彼は彼女と法の下に結婚することになりました。
そして共に幸福な生活を送りました。
しかしそれはただ少しの間だけしか続きませんでした。
その妻が偽りによってそれをぶち壊したのです。
  皇后はすぐに知らされました。
それはそれは高貴なその子供が、
皇帝の継嗣であったということを。
良い子で美しい。
皇帝が皇后に語ったその話は、
彼女に大変な苦痛を生ぜしめました。
常に彼女は物思いに沈むようになりました。
その子供を死に至らせるという思いに。
  五月の良い天気の朝、
皇帝は彼のベッドで横たわっていました。
そして皇后も一緒に。
「私達の今言うことを聞いては下されないでしょうか、
陛下。」彼女は言いました。「お話するのは私です。
貴方には優れた息子さんがおありです。
Page10, 267-304
良い子で美しい。
本当に陛下、私は彼を私の子供だと思っています。
貴方が貴方の息子さんを可愛がっているのと同様に。
それゆえお願いですから、
愛すれば陛下は私に愛を下さるはず。
王子を迎えにやってほしいのです、それはみこころで、
そして彼と話をさせてくださいませ、それが私の望みです。
私の願いを聞き届けて私を喜ばせてほしいのです。
私が懇願したのはこれが初めての事。」
皇帝は全くじっと静かに横たわっていて、
皇后に彼女の望みを全部言わせておきました。
皇帝は彼女の虚偽に用心しませんでした。
ついにはそれが明らかになったのですが
その時には、皇帝は答えました。
「いかにも、妃よ、私にはもはやいません。
彼以外には子供は誰も、確かに。
そして今私はどういう訳かわかりました。
妃が彼に会いたいと思う事が。
王子は帰宅するでしょう、妃のために。
夫人はそこに横たわり言いました。
「陛下よ、毎日の定期便の
使者を早急に用意して、
彼を連れ戻しに行くために出立させて下さい。
皇帝は言い、またそのために誓いました。
「誠に妃よ、それは遂行されるでありましょう。
しかし皇帝は知りませんでした。
彼女の邪悪な思案の何たるかを。
彼女は王に不運にも処刑されねばなりません。
彼女は魔法をかける術を得たのでした。
それは七日七晩、
王子は誰ともしゃべってはならず、
もしどんな言葉でも彼の口から出てきたならば、
従者たちは彼の弁舌を聞くかもしれないけれども
直ちに王子の心臓は粉々に壊れることであろう。
或いは彼は二度としゃべれないであろう。
この魔法をを邪悪な女がもたらしたのでした。
王子を死に至らすために。
Page11, 305-341
  使者が出発の準備ができた時
王子を追い連れ戻すべく。
皇帝は特使らに言いました。
厳格で誇り高い者達でした。
「七賢人達のもとへ汝ら行くべし。
そして私が挨拶状を送りますと伝えなさい。
また彼らに命令を伝えなさい、時間厳守で
三日目以内に来ること、
彼らと共に私の愛しい息子を連れて来るべしと。
その息子を彼らが教えなければならない。」
そkで使者らは長居は無用でした。
使者らは大変すみやかに、
急いで彼らの道をたどり、
七賢人の所へやって参りました。
そして言いました。「学者諸氏、
貴方がたは皇帝を迎え入れるであろう。
皇帝は貴方がたが三日以内に、
時間に遅れることなく皇帝のもとへ来るようにと命じられました。
しかも貴方がたと一緒に愛しい御子息を連れて来るようにと。
皇帝が貴方がたに教育を委任したその王子とです。」
使者らは大いなる礼をもって迎えられました。
皇帝の愛故に。
王子と師達は皆、
講堂から出て降りて行きました。
愉快に過ごすために木陰のあずま屋へ。
そしてそこで彼らは奇怪な出来事に遭遇したのです。
夜が近くに急速に迫って来ていました。
そして光っている月が明るく照らすでしょう。
それで彼らは空の一定の方角を仰ぎ見ました。
大変高い所の月と、
月の側の一つの星から、
次に起こるであろう事柄を見たのです。
その時カトン師がためらわずに言いました。
「同僚の方々、私は月に予見します。

[......原文空白箇所..........]


我々は我々全員を破滅させたのです。
皇帝は召喚状を含むメッセージを我々に送ってよこしました。
それは我々に皇帝の子息を我々一同が付き添って連れて来なさいという命令です。
Page12, 342-378
王子が彼の父皇帝ののそばに出て来る時、
王子が喋ると王子は死にます。
王子の継母が黒魔術によって成就せんとして、
彼女はいかにして王子が死ぬべきかを定めていました。
もしもかれが口を開けば彼は死す。
そしてその結果我々は殺されるでしょう。
皇帝はイエスによって誓います。
何もかも彼は我々を責めるでしょう。
  王子は彼の視線を上の方に向けました。
そうしてカトン師が見たものをすべて見ました。
「先生。」彼は言いました。「先生は御覧になるのですか?
私が見るものとは違うものを。
星に私は私の救済を見ます。
そして私は挨拶の言葉をなしで済ませます。
七日七晩。
私は私の力を回復するでしょう。
そして私の悲痛は歓喜へと変わり、
また先生方全員の責任もなくなります。
その時バンシラス師が申しました。
「本当にこれは奇怪な出来事であります。
それゆえすぐに相談するのがよかろうと思います。
どうしたら一番よろしいのかを。
どんな方法でこの黒魔術を使う婦人に打ち勝つことができるのでありましょうか。
私達の全生涯にとって
協議がない限り
確かに私達は殺されるに違いないのです。」
  王子は彼が立っている所で答えました。
「私は先生に良い助言をします。
七日間私はこらえなくてはなりません。
私が返答しないということ。
もしも私が大声であろうが低い声であろうがしゃべればいかなる場合でも
最初の一言で私は死ぬでしょう。
そして先生も両方とも、七人のお師匠様は皆
賢者であると私は天空のもとで考えます。
各自戦いましょう。もしよろしければ
私の命を一日お守り下さりますように、
巧妙な知識を以って。
Page13, 379-416

なぜならもしもわたしが死ねば先生は殺されるからです。
バンシラス師はいいました。「もしよろしければ、
ある日私は御身の命を助けてあげたい。」
そして他の師達一同申しました、確かに。
師達は各々皇帝の息子にくみしたいと欲しておりました。
それから師達毎に彼らの日を選びました。
一刻の猶予なくそれを守るために。
日曜日はバンシラスでした。
そして師達は王子の命を助ける日が何曜日なのかを知りました。
こうして彼らは一週間通しで王子救命の物語を構想することとなり
再び講堂の中に入りました。
そして使者達をもてなす食事を出しました。
時間になった時就寝しました。
  翌日夜明け頃
彼らは王子の身支度を整えるために急いで務めを果たしました。
彼らは大いに注意して出て行きました。
彼の師達を皆残して行ったのです。
王子と共に彼は師をけっして連れて行きませんでした。
バンシラス一人以外は。
それでバンシラスと王子は帰りました。
ローマ市まで真一文字に進みました。
王子は宮殿の中に入り、
大広間の中に行きました。
そして彼は彼の父と
その周囲の貴族達にお辞儀しました。
彼の父が御機嫌いかがですかと聞いても
王子は答えませんでした。
しかし直ちに彼の父にお辞儀しました。
そして石のように黙って立っていました。
皇帝はその時立腹して、
バンシラス師に話しかけました。
「師よ、ことの起こりはどうなのですか、
私の息子が何も言葉を述べないのは。
それに私が彼を貴方に預けた時、
彼は言葉を大変上手に話しました。
そして今彼は何語も喋らないほうがいいのか、
それ故に神の呪いがあらんことを!」
「陛下よ。」バンシラス師は申しました。
Page14, 416-454
全くひどい災難です。!
昨日彼は
我々のうちの誰とも同じくらいよく話していました。聖ミカエルによって。」
  皇帝とバンシラスが、
この異常な出来事について話していた間に、
皇后の所へ知らせが伝えられました。
王子が何も喋らないという事。
彼女は大広間に降りて来ました。
彼女と共に彼女のメイド達も降りて来ました。
そして礼儀正しく彼は婦人と
彼の継母に仕えている彼女のすべてのメイド達にもお辞儀しました。
彼は静かに立って何も物を言いませんでした。
彼は彼女の邪悪な意図を十分知っていましたから。
夫人は皇帝に言いました。
「陛下は陛下の息子を大いに礼をもって迎えました。
それなのに彼の口は固く閉じられ、
王子はけっして一言も発話しようとしません。」
その時皇帝は言いました。
「妃よ、聖なる救い主によって、
彼は私に何も口をきかないのです。
いったいどうやって話をさせようか、妃よ、貴方と。?」
夫人は言いました。「誰が術策を思いついたのでしょうか。
陛下、私達をしばらく二人にさせてください。
部屋へ連れ立って入り閉じ込めて
きっともしも王子が決して話さなければ、
必ずや私が王子に発音させてみせましょう。
もしも彼の声が少しでも思わず漏れたなら、
本当に私は彼の主治医となりましょう、
もしも永久に彼が対話するなら。」
全王領の皇帝は、
彼の息子の手を取りました。
そして言いました。「妃よ、彼をここで抱きしめて、
貴方と一緒に行きたい所へ行きなさい。
私は貴方に彼を授けてよろしかろう。
貴方がしたいと思うことをするために。」
  すべての王国の皇后は、
Page15, 455-492
子息の手を取り
一室へ一緒に入って行きました。
そして貴方が知るように大変邪悪に、
次の如く彼女は虚偽をめぐらしたのでした。
強いて王子を破滅させるために。
彼女が部屋に入った時、
妃が子息の手をとって、
彼に申しました。「親愛なる可愛い人、
家来達は私が父上の愛人であると思っています。
太陽と月を創造した彼によって
彼はけして私と性的なまじわりをしませんでした。
もう再び彼はしません。
私の肉体が全くもって処女なのは、
私がその鍵を下ろしたのは貴方故に。
貴方がなさることを共にするためになのです。」
王子は立ったまま何も言いませんでした。
そして大変な物思いに沈んでいました。
彼女は彼の首の周りに彼女の腕をあずけました。
そして彼女の謀の言葉でいいました。
「私に接吻してください。みこころがかなえられますよう。
私の一生涯は貴方次第です。」
王子は天上の幸いを思いました。
彼は婦人にどうしても接吻しようとは思いませんでした。
また他の事もしませんでした。
しかし彼女の二つの腕がこっそり出て、
彼女が見るや否や
彼女の腕から彼が逃げたのを、
彼女の頭がそれほどまでに横にされ、
突然彼女は頭をベッドに投げ落としたのです。
彼女の衣服を引き裂き下品な物腰で振る舞い、
そして皇帝に聞こえるように叫びました。
家来たちが彼女の叫びに留意するように、
彼女は彼女の顔を出血させました。
  皇帝が彼女の叫び声を聞きかけつけた時、
部屋の中へと彼は急ぎました。
それで直ちに彼は来ました。
甲高い声を上げて絶叫しました。
そして言いました。「陛下、皇帝陛下、
Page16, 493-529
ここを見て下さい。なんとまあ偉大なる王の誉れですこと。
貴方の息子はあなたのようになさろうとしたのです。
お聞きください。彼は私を絞め殺そうとしたのです。
つまり彼が私を横倒しにして抱く前に
しかし私は叫びました。
実際、彼は陛下の子孫ではなく、
それは悪魔であり、彼は狂っているに違いありません。
ほんとうに直ちに彼が縛られるのでなければ、
彼は私達一人ひとり殺すでしょう。
皇帝はもう少しで気も狂わんばかりでした。
彼が彼の妻の血を見た時、
彼女の無帽、彼女の引き裂かれた衣服。
彼は直ちに誓いました。「聖ヴンセントによって、
私は決してパンを食べません。
卑しむべき嘘つきが死ぬまでは。」
  直ちに皇帝は、
彼のもとへ一人の拷問吏を呼び出しました。
そしてもう一人と三人目を。
そして言いました。「私はお前達に命じます。
この罪人を捕えて彼をしっかりと縛りなさい。
綱が続く間。
それからお前達は彼を罪人を吊るす所に連れて行き、
即座に彼は彼の最後を遂げるであろう。
そして彼が時間がかからないように気をつけなさい。
彼を死なせるまで。」
皇帝の命令に反対する人は一人もいませんでした。
身分の高い人も低い人も反対しませんでした。
獄吏達は王子を捕えてしっかり縛りました。
ロープが一番終わりまで巻かれる限り。
皇帝の命令に従って、
彼らは王子を処刑へと護送しました。
大広間にいたナイト爵達と貴婦人達、
騎士の従者達と待女たちは皆、
彼らの思いは驚愕でした。
何という悲惨な出来事がこの部屋で引き起こされたのでしょうか。
  大広間の伯爵達と男爵達は皆、
皇帝のもとへ行きました。
Page17, 532-566
そして申しました。「皇帝陛下、
陛下は少しも自らの名誉となりません。
御子息を殺害することを許すとは。
しかるべき法的手続きをすることなく。
今宵一晩中彼を生かしてやりましょう。
明日の夜明けまで。
そしてその時もし彼が殺されることになれば、
彼を裁判にかけましょう。」
それで皇帝が答えました。
「諸侯の皆さん、私は貴方がたに話します。
貴方がたの法の下で彼は生き続けるでしょう。
明日まで。
そしてそれがどうであれ。」
彼らは全員で皇帝にお礼を言いました。
皇帝が彼らに面目を施したことで。
彼が貴族達の願いを聞き届けたので、
彼らはすぐ栄光に浴しました。
皇帝は直ちに命令しました。
王子を連れ戻しに行くようにと。
それで彼らは王子を連れて帰りました。
大勢の貴族達に囲まれている大広間の中へ。
皇帝は直ちに命じました。
王子は投獄されるべしと。
そして彼は一晩中監獄で横たわるのです。
翌日の夜明けまで。
今や王子は監獄に連れて来られ、
深い悲しみがいつも彼の心から離れませんでした。
天国で王座を占めている神が、
王子を釈放するのです。彼のみこころが行われる時に。
  皇后は悲しい思いにふけりました。
王子が再び連れて来られたからです。
彼女は嘆き大変不幸になりました。
その日が過ぎるまで。
それから彼らをベッドに引き入れました。
彼女の国王の考えを変えるために。
彼らが一緒に床についた時に。
Page18, 567-591
彼女が言った事を貴方は聞くことになるでしょう。
彼女はどうやって彼女の主君を意のままにと煽動したのか、
夜明けまでに王子を殺すために
彼女は泣き彼女の手をもみ絞りました。。
そしてその間ずっと何度もひどく嘆息しました。
皇帝は横になると耳に入りましたので、
彼女に何故そのような振る舞いに及んだのかと尋ねました。
そして言いました。「直ちに言ってください。
どういうわけで貴方はすべてを嘆くのですか。」
「陛下。」その時夫人は言いました。
私に悲哀あれとはむりからぬことです。
陛下は、
邪悪な助言に従って行動するよりも
陛下は御自分で多くの苦悩にさいなまれた方がよいのです。
賢者達のそれぞれの物語を信じるとなれば。
そのうえ陛下にもふりかかるかもしれません。
見事なリンゴの木の行為のように。
芽を出した枝のため、より大きな枝のそばに。
その彼女の高貴な位置はすべて失われました。
「確かに、妃よ。」皇帝は言いました。
「私は汝が私の名誉を重んじているのを知っています。、
したがって妃よ、私は貴方に命令します。
私にどのようにそれが起こるのかを話して下さい。
そして私達はそれについて考えようではありませんか。
そうすることが最善の道です。」


十五編の枠組み物語集 目次

a Japanese translation  和訳

1. 第1夜 王妃の第一物語  木

 

a English translation(英訳)


Page18, 592-602

  直ちに夫人は彼女の物語を語り始めて
申しました。「貴方、一人の男が住んでおりました。
人々が言うところによればナイトだったそうです。
そして彼は美しい樹木を栽培していました。
これから貴方に何が起きたのかをお聞かせしましょう。
まっすぐな高木を真ん中にして
りんごの木はそこに立っていました。
一本の美しい木は良い木です。
明けても暮れても
その邸宅の所有者はそこにいる時間、
彼は大いに楽しみなぐさめられました。
Page19, 603-640
その木は美しい枝の広がりを見ます。
しばらくの間それは長くはありません。
一本の枝が木の外側に芽を出していました。
だからナイトは喜びました。
それがどんな風に成長して美しく広がるのだろうかと。
  ある日ナイトが来ると
一定量の枝が次第に変形して曲がった方向に伸張しているのを見ました。
この大木の大枝が
妨げとなって小枝が良く育たないのかもしれません。
領主は彼の園丁に言いました。
「私がここにいるうちに斧を持って来てください。
この豊かな大枝を切り倒して
それから枝に十分な空間があるようにしてあげよう。」
園丁はすぐに用意に行きました。
領主から言いつけられたことをするべく
こうして彼は若枝の成長を促進させます。
それは老木から生じた枝でした。
それでも彼はおので老枝を切り取らせました。
沢山の大枝と少なからぬ数の主枝を。
切り落としたおかげで若い枝はのびのびと広がり
老木は枯れ始めました。
園丁はひとまとまりの根を見ました。
「ほんとに、ご領主様、治す方法がありません。
老木が持っていた己がすべての美徳、強さは
小さな木の中に入って成分となりました。」
「まったくのところ。」その時領主は言いました。
「園丁よ、もしそうなら
他にとるべき策はなかろう。
木を根こそぎ掘り起こす以外に。」
こうしてその木は痛めつけられました。
りんごの木の己から発芽した枝のために。
年を取った大きな木がすべて朽ちてしまうと
小さな木は枝を張り優位を占めたのでした。
  「そういう風にして若枝を伸ばすでしょう。
貴方にとって不公平になるように空間を得ようと試みます。
そして四方八方の貴方の大枝を切ります。
それはそれほど広く拡大した陛下の勢力です。
こうして彼は恐れ気も無くなり
Page20, 641-680
彼は老年期に入った陛下を倒すのです。
  邪悪な女性がそこまで語った話は、
王子を傷つける策略からでした。
「妃よ。」皇帝は申しました。
「主イエスキリストに誓って
脈打ち生きている人間たちのために
明日彼に死刑の辛苦をなめさせてやる。」
  翌日の早朝に
皇帝はナイトを呼び出しました。
「私の牢獄へお前が行き、
直ちに私の拷問係に言いなさい。
お前が私の息子を拷問にかけなさいと。」
確かに今日彼を死なせるのです。
ナイトは心の中で悲しみました。
しかし彼は皇帝に背く勇気がありませんでした。
心とはうらはらに拷問役一人一人に命じました。
王子を直ちに処刑するようにと。
すぐさま子供は殺されることになりました。
皇帝の意志に従って。
王子がいよいよ死ぬというだんになって
彼は偶然バンシラス師に会いました。
王子は死ぬのを恐れました。
彼に悲しげな目を向けました。
バンシラス師は再び馬に乗って何も言いませんでした。
彼は王子の胸の内がよくわかりました。
王子の名誉を守るために
彼は皇帝の前にすぐ参りました。
  「陛下。」バンシラス師は言いました。
「確かにこれは人を畏怖させて追放する事柄です。
陛下が決定なさったのは
罪を犯していない王子を死刑にするという事。」
そのあと皇帝が申しました。
「私には一つ以上の理由がある。
君ら七人はあらかじめ思うままに定めた。
我が息子にこの七年中、
礼儀と知識を彼に教育すると。
そしてあなた方は彼の舌を沈黙させた。
私は彼に愛を与えておくれと頼んだ時、
彼は私に一言も話そうとしなかった。
それからもう一つ判決を言い渡すもっともな理由があった。
Page21, 681-717
罪深きやつ、邪悪な子。
彼は私の妻をレイプしようとしていた。
彼は彼の我意をおし通そうと思ったのか、
彼女の肉体を横にして性交しようとしたのだ。
彼を殺す、確かに、
そしておまえも、必ず。
おまえ達を殺す、七人全員を。
その時バンシラスは言いました。
「陛下は王子の醜態をたいそう嘆いておられる
もっと、事件の真相を取り調べる前に。
きっと私は命をかけて
奥様の訴えから判断する陛下を恐れません。
子供は全く善良な事しか考えなかったのです。
女性は驚嘆すべき熱情的気質なのです。」
怒った皇帝は、
バンシラスに返答しました。
「バンシラスよ、お前の異議を唱えるのはよしなさい。
私は無帽の妻の髪が乱れて
彼女の着衣がばらばらに引き裂かれていたのを見たのだ。
ならず者があたかも彼女を暴行したようであった。」
  バンシラスが答えて、
子供のために、彼に災いなるかな。
と言いました。「陛下、お命だけは
陛下のご子息の一命を奪わぬように。
もし陛下がその挙に出れば不幸になられます。
残虐なナイトのように、邸宅で
彼のグレイハウンドを殺害したのです。
その犬が彼の息子を救ったのでしたが。
それ故犬虐殺が彼の悲しみの種となり
彼は自ら非業の最後を遂げました。」
即座に皇帝はバンシラスに申しました。
「それがどうして事件になったのか物語給え。」
「陛下、バンシラスは言いました。「何の目的で?
そうすることでどんな恩恵を与えられますか?
話をする前に
王子の血が通わなくなり冷たくなるでしょう。」
Page22, 718-725
皇帝は急いで命令しました。
子供の後を追って行くようにと。
一助のおかげで喜んだ王子は
皇帝の前に連れて来られ
皇帝の指令によって
再び彼は監獄に送られました。
あっという間にその子はいなくなり
直ちに師は彼の物語を開始しました。
卒論バージョン、SOUTHERN VERSIONと比較


十五編の枠組み物語集 目次



a Japanese translation  和訳

2. 日曜日 1番目の師バンシラスの第2物語  犬

a English translation(英訳)


Page22, 726-751

  ナイト爵がいましたとバンシラス師は申しました。
武芸に秀でた金持ちの男で、
善良な女性を妻にしておりました。
そして一人の婦人との幸せな暮らし。
二人の間、そこに継嗣が生まれました。
聞きわけのいい愛らしい子供、
それは幼子で、
12か月(一歳)でした。
確かにつつがなく、
ナイト爵はその子をとても愛していました。
そのナイト爵は他にも宝を所有していて、
それを大変好んでいました。
一匹のグレーハウンドはよく訓練されて俊足でしたから、
ナイト爵はその犬を大層可愛がりました。
また大変善い行いをしたのです。
彼が近づいたすべての動物に対して。
ところが美徳の報いとして彼は殺され、
それ故にナイト爵は深く悲しみました。
  ナイト爵はトーナメントの日を決めました。
五月のトリニティー祭のある時期に、
お互いによく試合をして、
一つ或いは二つの槍を粉砕しようと試みたものです。
そのナイト爵はそのことを話すのを聞きました。
馬上槍試合をする彼の牧場に彼らは滞在するのでした。
彼の広間からちょうどわずかな距離にあり、
そこに騎士達が皆集まっていました。
Page23, 752-789
彼の邸宅に居た人達全員が、
そのエンターテインメントを見に行きました。
ナイト爵の子供を二人の乳母に預けて、
彼女達はどこへも行く勇気がありませんでした。
皆が行ってしまったのを乳母達が見た時、
彼女達二人以外は誰も残っていませんでした。
そしてトランペットと小太鼓の音を聞くと、
乳母達は彼女達の役目の遵守を忘れてしまいました。
その時彼女達は直ちにその子供を放置して、
二人とも出かけるという振る舞いに至ったのでした。
塔に行き彼女達は高い所に登りました。
誰にも見られないように慎重を期して
そこで乳母達は二人とも静かに立っていました。
そうしてその間ずっと馬上槍試合を見ていました。
  その邸宅に造られてあったのは、
用をなしていない古い塔でした。
そして割れ目に成長した
一匹の毒蛇が居りその中に一つの寝床がありました。
そのマムシは目を覚まして聞きつけたのです。
屋敷の人間達が一人残らずどうして出かけたのか、、
トランペットと小太鼓とメロディー。
それに馬上槍試合の布告官が騎士名を呼びあげていました。
毒蛇はあらゆる所で道を縫いました。
彼女が壁の外に出るまで
彼女は壁から外へ出ました。
彼女は広間の中へ行きました。
そして揺り籠の方に近寄りました。
その中にいる子供を殺すために。
彼女は揺り籠めがけて赤ちゃんを求めていました。
名犬グレーハウンドは横たわって見ていて、
そこであまりにも怒ったので、
彼は広間の中へ行きました。
グレーハウンドは直ちに立ちあがりました。
そして彼はマムシに急進しました。
そこで長い戦いがありました。
それから二匹のうちどちらも一方は強い他方を負傷させました。
彼らが戦うにつれて、貴方も聞き知るように、
揺り籠はひっくり返ってしまいました。
Page24, 790-827
揺り籠は家具の突起装飾の上に立ちました。
その子供は幸運だったというのではないけれども
目を覚まさず泣きもしませんでした。
しかし横になって全く静かに眠っていたのです。
グレーハウンドが蛇のあまりすぐそばまで行ったので、
蛇は庭の中へと逃げました。
グレーハウンドは彼女をとても早く見つけ、
とうとう彼は彼女を殺しました。
その時マムシは死んだのです。
グレーハウンドは彼女を広間に横たえました。
不幸にも彼は体中傷を負いました。
そして実際彼は横たわり苦痛の叫び声をあげました。
  馬上試合が終わった時、
乳母達はすぐさま急いで帰宅します。
彼らはもはやぐずぐずしているわけにはいきませんでした。
彼らはグレーハウンドが横たわり大声で泣いているのを見つけました。
そして狂ったように振る舞っていたのを。
また彼の頭は一面血だらけでした。
あの二人の乳母は用心深かったはずなのに見ました、
揺り籠の底が宙返りして逆さまになっていたのを。
そこで血で汚れたグレーハウンドを見ると
彼女たちは二人とも大変怖がりました。
「友よ。」彼女は言いました。「私の血筋に誓って、
このグレーハウンドは気が狂ったのです。
それで子供は食べられてしまいました。
嗚呼 私達が生まれてこのかた!
もう一人の乳母は言いました。「全く
確かに、友よ、 本当です。
嗚呼、ちょうどその時に。」彼女は言いました。
私たちは馬上槍試合を見に行ってしまいました。」
彼女たちは後悔でいっぱいになり嘆くばかりでした。
そして二人とも立ち去って身を処しました。
  彼女たちが牧草地に向かって流れるように通った時、
夫人は横たわってじっと見ていました。
そしてここで精神的に寒気を感じ始めました。
心が婦人をすぐに支配しましたので。
それからそれは何なのかと驚きました。
その時彼女は彼女の乳母を見たのです。
Page25, 828-865
それで直ちに一人の羊飼いを呼び出しました。
そして乳母達を連れて帰るように命じました。
夫人の前に彼女達が連れて来られました。
夫人は彼女自身に悲しかったのです。
そして赤ちゃんがどこにいるのかと聞きました。
すると彼女たちは泣いて言いました。「嗚呼!」
「確かに、奥様。」二人の乳母のうちの一人が申しました。
「当然、私達は直ちにお話いたします。」
私の領主様のグレーハウンドは気が狂い始めていて、
生身の男の子は食べられてしまいました。
夫人は大変悲しみ、
そして泣き出しました。
この邸宅の主人は婦人が泣いているのが聞こえました。
そしてそちらの方へ彼は急いで行きました。
それから言いました。「妃よ、一体この大騒ぎは何ですか?
直ちに話しなさい。隠さずに。」
それほど痛ましい夫人は、
その時彼女の夫にいいました。
「あなた。」彼女は言いました。「確かに、
貴方が愛してやまない子供を、
あなたのグレーハウンドが発狂したので
赤ちゃんの血肉を食べたのです。
  その時夫は大変悲しみました。
広間に向かって彼は近寄りました。
すると夫人は一緒に彼を連れて行きました。
広間の中にすぐに彼は来ました。
グレーハウンドは彼の主人を見ました。
そして彼の顔を頭上高く彼の手柄にも向けました。
彼の主人の胸の上で喜ばせるために。
それだけいっそう不憫でした。
ナイト伯爵は直ちに剣を抜きました。
そして背骨を激しく打ちのめして殺してしまいました。
ナイト伯爵は直ちに命じました。
彼の視野に入った揺り籠を運んで来るようにと。
そこに立っていた召使は喜んで、
ナイト伯爵が命令したことをしました。
揺り籠を彼の腕に抱えて遂行したところ、
揺り籠に危害がなかったことがわかりました。
Page26, 867-903
召使は子供を彼の腕でしっかり抱きしめて、
彼は広間に行き、
言いました。「嗚呼、貴方様の忠犬グレイハウンド!
ここに全く健康で元気な貴方の息子さんがいます。」
広間に残っていた人々は、
皆非常に驚きました。
その子供が生きていた事に。
そしてそれは驚くべき出来事だと言いました。
とうとう彼らはすべてを知りました。
どんなふうに窮状が生じたのかを。
どのようにしてマムシは殺されたのかを。
それはグレイハウンドが蛇を引きちぎりばらばらに寸断したのでした。
「嗚呼。」その時ナイトは言いました。
私の忠犬グレイハウンドが死んでしまった。」
ナイトはそれ故悲しみました。
彼のグレイハウンドが取り返しのつかないことになりましたから。
果樹園の中に彼は入って行きました。
魚がいる池まで彼は来ました。
そこで彼の猟犬を悼み
彼は池へ飛び込み底に沈みました。
  「陛下。」バンシラス師は申しました。
「今陛下はこの事例をお聞きになられました。
もし陛下が陛下の御子息をお殺しになれば、
陛下の妻の願いを叶えんとしたために、
陛下もこういう目に会うことでしょう。
彼の大広間における振る舞いのように、
彼の猟犬を殺害して彼の命を失わせた
彼の妻の言葉のために。
  皇帝が聞きました時、
この物語がどのように終わったのかを。
彼はいいました。「バンシラス師よ、
私の身の上にこの事例は及ばないであろう。
私の妻の言葉を信じないからです。
今日私が手を下して彼が命を失うことはありません。
そんなに痛々しいほどには彼の身柄を拘束することもないでしょう。
私がもう少し調査する前に。」
こうしてバンシラス師によって、
その日子供は救われたのです。
Page27, 904-927
  どんな人でも婦人を嬉しがらせる人はいないでしょう。
彼女は嘆息して苦渋の表情をしていました。
また悲しみを自覚してもいたのです。
王子が再び連れて来られるので、
夜までこの事に関してよく考えていました。
その目的のために彼女は全力を尽くしました。
皇帝を思うままに仕向けるためにです。
翌日王子を殺すように。
ベットへ彼らが伴って行った時、
「陛下。」彼女は言いました。「陛下は何を考えていられるのですか?
いいえ、陛下は御自身の目で何も見ておられません。
私がもう少しで死ぬことになっていた場所で、
恥ずかしいことに陛下の息子さんが私を扱ったように。
あの王子は再び投獄されるのですか。?
そのうえ陛下に降りかかるにちがいありません。
掻いてくれたためにまたそれは良いと判断したがために
彼は心臓の出血で命を失います。」
皇帝は彼の妻に言いました。
「妃よ、貴方の苦情を言うのをやめて、
今私に話してください。私は貴方に命令します。
猪がどういうふうにしてそういうことになったのか。
それから{・・・・原文空白部分・・・・・}
直ちに彼女の物語が始まりました。
卒論バージョン、SOUTHERN VERSIONと比較


十五編の枠組み物語集 目次


a Japaese translation  和訳

3. 第2夜 王妃の第3物語  イノシシ

a English translation(英訳)


Page27, 928-937

  冒頭の言葉、「陛下、一頭の野猪でございました。
くすんだ古い森林に生息していました。
未開墾の森に一本の樹木が育っていました。
イノシシはその木が一番好きでした。
その木になる実は食べて最も美味しい果実でしたから。
毎日彼は人間が足を踏み入れない其の所へ来ました。
午前9時から12時まで彼は実がなる木の辺りに来ています。
木の下に落ちている果実を食べるために。
一人の牧夫が一頭の家畜の姿を見失ってしまい
故に彼は深く後悔の念にかられました。
Page28, 938-974
長い間彼は二の足を踏んでいる訳にはいかず
彼は四方八方彼の家畜を探しました。
森の中へと彼が知らない道を進んで行くと
彼はその木が見える前に出ました。
イノシシがいつもの果実を食うことに慣れていたいつもの場所でした。
それから彼は歩いて行く前に恐れました。。
彼が考えたのはその果実はさぞ旨かろうということで
彼の頭巾の中に縁まであふれるほど拾い集めました。
  野猪が樹木めがけて猪突猛進して参りました。
地面にある彼の食とする果実がいつもに比べて足りないと
訝った時家畜番が猪を見て
彼は怯えました。
すかさずイノシシは近寄ってきました。
牧夫はその木を上へ上へとよじ登りました。
猪もすばしっこくそこへ急ぎ回りました。
ところが不幸にもいよいよになって彼の肉体的条件で木登りはうまくできません。
一方牧夫は彼が見ているうちにかなり十分上っていました。
彼はなんと樹上高くよじ登ったことでしょう。
それでもイノシシは牙で土塊を突き掘り起し牙をとぎ始めました。
それから木を打っては喘ぎ
彼は狂わんばかりに地面に身体を横たえました。
遂に打撲傷から流れる血とともに彼の口から白い泡を吹くまで猛打し続けていたのでした。
しかし木は安全に根を降ろしていました。
家畜番は恐ろしくて怯えたのにもかかわらず
自分が果実を拾ったことの報いとしてイノシシに遭遇したのだから
少年はイノシシに拾ったとうりに果実を投げ落としました。
案の定彼は極度に餓えていました。
だから実を噛んで飲み込むことに没頭してもう牙で木を動かそうとしませんでした。
その木の下で彼はぴくりともせずじっと立っていたかと思うと
また彼の腹を充分満たそうと果実を食べました。
家畜番は大枝の上に立って
果実を沢山撒き落としました。
  イノシシは食欲が満たされるたびに
木の下で彼は動きを止めてじっとして立っていました。
少年は下にいる彼に十二分果実を落としておいてから
枝を伝って肢体を使って降りていき
ついに彼の片方の手と
Page29, 975-1012
彼の両足でイノシシをしっかりとつかみました。
もう片方の手を滑らせて
イノシシのわき腹の下をそっとやさしく掻いてあげました。
イノシシはかいてもらうことがいたく気に入りました。
そうしてやると直ちに地面にごろりと寝転び
石のように寝入ってしまいました。
とっさの機転が功を奏し家畜番の男はナイフを抜き
そのナイフで彼の腹を裂きました。
そして野猪から彼の生命を奪い取ってしまったのでした。
  「かくの如く陛下も容易く学者達に掻かれるイノシシです。
真実味のある架空話と巧な進言によって。
さらに陛下の息子も忠誠を破り
狂王たらんとしています。
陛下の学者七人のために
陛下は欺かれるでしょう、天の神ジュピターにかけて。」
皇帝は申しました。「聖ブリジットに誓って
私はそんな運命に翻弄されまい。
彼はもはや私の頭痛の種でなくなるように
必ずや明日彼を殺すとしよう。」
  翌朝太陽が昇ると
皇帝は感情的にも準備を整え
直ちに彼の従臣や僕に命じました。
王子の処刑に荷担するようにと。
彼らは王子を牢屋の外に連れ出し
彼を都市の郊外へと導きました。
通りのほうぼう近臣らが王子を引き回していた時
師匠の一人が彼らの後からついて来ました。
皇帝の宮殿に向かっていた彼は通りに馬で乗り込みました。
しかし彼が生き延びるにもう少しのところで彼は時間がかかり過ぎます。
彼が一団に追いつき王子と目を交わすと
師匠は急いで彼の馬を駆りました。
王子を恥辱から救うために__
彼の名はアンシルス。
全力疾走で師匠は道を進行することができ
皇帝の御前に参上しました。
教育者の誉れが高い彼は
皇帝に敬意を表しました。
  皇帝は答えの代わりに憤怒の形相になりました。
Page30, 1013-1045
「赤恥をかかせてやろうか、いと高きところの師よ!
私は我が息子の教育をそちに委ねた
ところがそちは彼から言語能力を奪ったのである。
天国にいるというイエスキリストの名において
七人の師匠を皆投獄しよう。」
「嗚呼、陛下。」 アンシルス師は申しました。
「全能の神は我々を和解に遣わしました。
陛下、決して貴殿をそう怒らせるようなことではありませぬ。
陛下は真理の一切を知らず先行き不安なのです。
もしも陛下が自ら王子を亡き者にするならば
皇帝の妻の語り口に引き込まれて。
陛下の身に同じような事件を予知します。
イポクラスに降りかかった事例に照らして。
イポクラスは罪の意識もなく彼の甥を殺害しましたが
その悪事の報いは自殺でした。
皇帝はアンシルスに申しました。
確かに平穏になることは決してない。
私がその事件を知るまでは。
それはイポクラスの肉体と精神を終身苦しめた事とな。」
アンシルスは答えました。「陛下、どんな死にざまであったかをお知りになりたいと仰せですか?」
何か私でお役にたてることがありますか?
本当にあったそしてまた私の想像した話をする前に
王子の脈拍は打たなくなり体は冷たくなるでしょう。
しかしもしものことあらば私は彼の命を救わねばなりません。
この夜通し明日まで
彼が持ちこたえてくれればよいのですすが。
私はイポクラスのことを語りましょう。」
すぐさま使者に王子の後を追わせました。
皇帝の命に従って。
それ故師は一時的な喜びにひたり
直ちに彼の物語を始めました。
卒論バージョン、SOUTHERN VERSIONと比較


十五編の枠組み物語集 目次


a Japanese translation  和訳

4. 月曜日 2番目の師アンシルスの第4物語  医者

a English translation(英訳)


Page31, 1046-1079

  専門のわざに長けた医者がおりました。
イポクラスという名でした。
彼には彼の血を引くおいがいましたが
長い間イポクラス医師から知識を得ることができませんでした。
彼は叔父の態度を全く何とも思わずに
しかしついに彼は自分で解決しました。
いかにしてもまたどういう方法で、
彼にはどんな医学知識でも習得できる才能がありました。
彼は彼の叔父の本を開き
毎日それを見ては調べて
医者になりました。
その技量は誰にも負けませんでした。
  ハンガリーの王の王子は
恐ろしい病気にかかっていました。
国王はイポクラスを呼びに使者を送りました。
彼の何所が悪いのかを知って治療するために。
イポクラスは老をとっていました。
そして血液循環のよくない体が冷えました。
彼は実に立派に盛装させて
彼のおいをハンガリー国へ遣わしました。
彼が来るや否や
国王は彼の手を取り
直ちに彼は案内されました。
石のように黙して
王の息子、王子は寝ていました。
何日も病の床に臥せっていたのです。
イポクラスのおいは観相術について知っていました。
だから彼は彼の目でよく見ました。
彼がしばらくの間座っていた時に
彼は王子が庶出の子供だとわかりました。
そういう洞察力に富んだ学者達は以前にもいましたが、
近来そのような賢い学者は一人もいません。
彼らは皆学問の研究をやめて
名誉ある地位を求める衒学的学者像へと変貌し淫乱がはびこる有り様でした。
Pgae32, 1080-1117
  その時甥は、はっきりと理解しました。
それでもやはり彼はそれをもっと確かな事柄にしようと思いました。
王妃のメード10人或は12人から
彼は王妃を全く一人きりにして椅子につき
言いました。「マダム怒らないで。
私に話してください。どうか気を悪くなさらずに。
もしも貴女が貴女の息子さんの生命力を失わせたくないのならば。
ほんとうのところ、マダム、貴女は告白すべきです。
私にお話ください、貴女は何かをしたのでしょうか。
実は、彼は国王を父親として産まれた子供ではありません。
それで貴女が実情を話して下さらないと
私は貴女の息子である王子を治すことはできません。
彼は回復の見込みがなく汗をかいていないのです。
誰が父親なのか貴方がお話にならぬのならば。」
王妃、国王の妻は、
彼女の息子が死ぬという告知にぞっとしました。
だから内緒で彼に申しました。
彼ら二人だけの秘密を他言しないのならと。
「ここからかなり遠方に公国の君主がおりまして
幾度も彼は馬を御して往来したものでした。
私の夫と楽しく過ごすためでしたが、
私と大公との二人の間で恋が芽生え
そういうわけで実際は彼が子をもうけました。
さて貴方はこういう次第がおわかりになるでしょう。」
  彼は彼女が苦境に陥ったいきさつの一部始終を知ると
彼の置かれている状況は愉快に変わり
子供の治療に取りかかりました。
イポクラス医師の本が彼に教えた通りに。
そして彼は王子を完全に治しました。
国王は何ポンドも彼にやりました。
さらに王妃も大変沢山の贈り物を与えました。
彼に彼女の内緒事を秘密にしておいてもらわねばとの計らいでした。
さて彼は本国、イポクラスの元に帰り
師にどんなふうにやってのけたかを何もかも話してしまいました。
イポクラス師は腹を立てるところでした。
彼の甥がそれほど完璧に理解していたとは!
直ちに彼の脳裏に不埒な考えが浮かびました。
彼の甥を殺害すること。
Page33, 1118-1155
  ある日彼らは遊びに行きました。
イポクラス師と彼の甥の例の二人は、
大変美しい草原の中へと入って行きました。
そこではきれいな花々が咲き始めていました。
イポクラス師はじっと立って
良く効く薬草を見ていました。
「優秀な甥っ子。」イポクラス師は申しました。
「私はとても効能のある薬草を見つけました。
どうかそれを根こそぎにしてはくれないだろうか。
沢山ある薬草の中でそれは医薬になるでしょう。」
その時若輩者はイポクラス師に言いました。
「愛する師よ、その薬草はどこにありますか?」
イポクラス師は申しました。願わくば彼に必ず禍あれ。
「それが位置する所、(薬草が生えている箇所)私のつま先を見よ。
ひざまずいて
それを根こそぎにして持って来てくれ。
そうすればおまえに教えよう、確かに。
何という病気に薬効がその中にあるのかを。」
若者は直ちにひざまずきました。
イポクラス師は直ちに剣を抜きました。
彼の甥を殺害したのはなおさら残念なことに、
彼が薬草を摘み取るために土堀りをしている間でした。
  それからすぐに彼は帰宅しました。
そして彼の(甥の)本を一冊一冊と焼きました。
気が狂った男のように怒って。
誰も彼の本で役に立つ知識を学べないようにするために。
彼が彼の本を燃やされた時、
そして彼の甥が殺されて
イポクラス師は病気にかかり
ご臨終となりました。
その時にはもう彼の本は全部焼失してしまって
それ故に彼は治すことが不可能でした。
彼が殺めてしまったのですから。
最も医学に精通していた甥を。
治療法がないために容体が悪化し
とうとうイポクラス師は死にました。
  イポクラス師の死は陛下の様相です。
陛下、忠告を守ってください。
Page34, 1156-1189
陛下にはただ一人の息子しかいません。
もし陛下が彼を死刑にするのを思いとどまらなければ
年老いた者が陛下の子のたくましい身体をしっかり捕えるならば
陛下を尊敬する人はほんの少数でしょう。
しかし陛下が高貴な王子を擁護すれば、
実は、陛下はけっしてそんなにお年を召していません。
陛下の息子の従者達は王を畏怖することでしょうから。
彼を生かしておきなさいと私は陛下に助言いたします。
皇帝は言いました。「私の首にかけても
今宵彼の命は助けてやろう。
今日と明日という日の間に、
その時までによかろう。」
  宮殿にいた者皆
喜びました。
あらゆる身分階級の人々は
邪悪な王妃から彼を守っていました。
彼女は再三再四嘆息しました。
「嗚呼、嗚呼!」ため息は彼女の歌でした。
皇帝は彼女の声を聞いたので
彼女にそれ何と問いました。
「陛下。」彼女は答えました。「ああ悲しいかな、
全く陛下にとっても今日は何という厄日でしょう!
陛下は夫であると同時にサーでもあるのに、
そのうえ帝国の至る所を征服したにもかかわらず
貴方は積極的に殺しに関与している。
陛下の学者達が彼らの意地を通すならば
彼らは彼を皇帝に即位させるつもりなのです。
塔で夜を過ごす罪を犯した者。
それでもし陛下が彼を私よりも愛しているのなら
陛下にもきっと災いが降りかかるに違いありません。
にかわの中で殺された彼のような事件。
それは息子が彼の父親の首を打ち落とすことになった事件でした。」
皇帝は言いました。「私は貴女に命じます。
その事件の顛末を私に聞かせてほしい。」
卒論バージョン、SOUTHERN VERSIONと比較


十五編の枠組み物語集 目次


a Japanese translation  和訳

5. 第3夜 王妃の第5物語  財宝

a English translation(英訳)


Page35, 1190-1222

 王妃は彼女の物語を始めて
申しました。「陛下、一人の男が居りました。
彼はローマ皇帝でした。
それでいていかなる享楽も好みませんでした。
一つの塔に満たそうとする以外に
黄金と高価な財宝を一杯に。
七人の学者のような人達は目を離さず監視していました。
陛下のように彼らの下にあったのです。
皇帝のそばに侍る七人の学者たち、
彼らは皆在宅していたわけではなく、
皇帝の命令に従って、
五人の学者たちは出かけて行き、
在宅している二人の学者たちは居残りました。
皇帝が彼らに命じた事をするために。
[・・・原文空白部分・・・]

二人の学者のうちもう一方の学者は幸せな生活を送っていました。
そして一人の妻と子供たちがいました。
それは不安のない男でしたが、
惜しげなく振る舞うこともありました。
彼は浪費することに気をつけませんでした。
それで彼の首は多大な犠牲を払わされました。
彼の金が減り始めた時、
彼は饗宴を催すことができなくなりました。
そこで急いで彼は計略をひそかに考えました。
そしてそのために無一文(物)になりました。
恐ろしい事件が起きました。
陛下はそれがどのようであったかを聞くでしょう。

彼は跡取り息子を加えました。
やさしく可愛い子供でした。
彼らは塔に行き押し入りました。

[・彼らは巧妙に地下に穴を掘りあけてそこを出た後一つの石で塞ぎます。・]


そして沢山の財宝を盗み、
酒宴を催しすぐに消費してしまいました。
その間ずっとそれは足りていたのでしたが。
二人の学者のうちの一人はその財宝の番をしてました。
Page36, 1223-1260
ある日彼は塔の中に来ました。
それからどこもかしこも彼の目をぐるりと見回しました。
あるべき物があるべき姿であるかどうか
彼はしらふで酔っていませんでした。
彼は財宝が沈下しているのを見ました。
彼は直ちに財宝の位置を動かすと、
盗人が立ち去った所を見出だしました。
穴がある所の前に、
彼は真鍮の深い大がまを据えて、
その中ににかわのようなものを入れました。
指定された場所に来るすべてのものを保持するために。
それから大がまが置かれた所を覆い隠しました。
そこには財宝の他には何もなかったように。
二人の学者のうち財宝(金袋)を盗んだいまひとりは、
それを使いすべてを浪費してしまいました。
彼は言いました。「造作なく、神の恩寵によって、
我々はもっと多くの財宝を手に入れます。」
彼と彼の息子は意見が一致したので、
そこに向かって彼らは歩き始めました。
彼らはお金がなくて困っていました。
父親はまもなく欺かれました。
穴の中へ父親は忍び込み、
そして彼はすぐ大がまに跳び、
すると直ちに彼は粘着してしまいました。
その時彼の息子は非常にうろたえました。
「やすやすと。」彼は言いました。「私は捕えられた。
お前は殺される前にすぐ逃げなさい。」
「嗚呼、父上。」彼は言いました。「悲しいかな!
確かに極限状況にあります。
本当に私は画策することができません。
愛する父上、どういうふうに処置したらよいのでしょう?」
「確かに。」彼は言いました。「他にとるべき策がないのだ。
急いで私の首を斬る以外には。
そして好機がある時、
それをキリスト教の墓に埋めてくれ。」
子供は非常な思いに沈みました。
彼の父親を助けるためにとはいえできませんでした。
それなのに他に助言がないこともわかっていました。
Page37, 1261-1298
しかし彼の父の首を斬って殺してしまいました。
そして直ちにそれを外套の中に折りたたんで強く押し付けてから
彼自身は即座に去るために行動しました。
それで直ちに彼は彼の家に帰り、
彼の外套のへりから外へ首を取りだしました。
それからそれを穴に投げ落としたのです。
その上に悪行をしました。
その時彼は彼の父の財産を手に入れ、
すると彼は次第に大胆になりました。
彼の心の底にいかなる悲しみもありませんでした。
なんと残忍な死に方で彼の父は死んでしまったのでしょう。
その後で彼は彼の父の得たものを自分のものにしてしまいました。
彼の父の死を彼はすっかり忘れ去りました。
「確かに、陛下、このように陛下も振る舞われることでしょう。
したがって万事私の心配の種です。
陛下は陛下の名誉を失い、
陛下の息子は皇帝になるでしょう。
二人の学者のもう一方の学者がやられたように陛下もまただまされるのです。
信義のない陛下の学者達の物語によって。
后妃は皇帝に申しました。
それで私はいつもミサに出席するのです。
私の息子が決して私に迷惑をかけることがないようにします。
きっと明日彼を死なせます。」
かくて極悪の女主人公である彼の妻は、
その夜子供の死をたくらんだのでした。

朝、一時課のずっと前に、
[一時課とは2番目の聖務日課定時課、午前6時或いは8時の祈り]
皇帝は早く起きました。
しかも彼の命令を発する日となりました。
それは子供は直ちに殺されるべし。
拷問を行う人は準備万端整えました。
皇帝が命じたことをするためです。
彼らは昼まで延ばしてはいけませんでした。
しかし彼らは子供を連れて行き彼らの思い通りに行動しました。
そして彼らは王子を学問の広場に向かって手引きしました。
そこで男たちは子供を打ち首にするはずでした。
ちょうどシティーの門に来た時、
彼の七人の師のうちの一人がそこで彼と出会いました。
彼の心はしあわせではありませんでした。
Page38, 1299-1332
彼の名はレンチュルス。
彼は子供に視線を注ぎ、
王子は死ぬのかしらと考えて悲しくなりました。
直ちに彼は道を行き、
皇帝の前に参上して、
言いました。「閣下、皇帝陛下、
神は陛下を救い陛下の名誉を守ります。」
皇帝は直ちに答えました。
「裏切り者、貴方がその人である。
私が私の息子の教育を委ねた師であるのに、
彼は言葉を失った。
とうとう私の妻によって彼の無言劇を終えただろうに、
私は彼を私の命によって殺してしまうのである。」
「陛下。」レンチュラスは言いました。

[・・・原文空白箇所・・・・]

私は命にかけて思いません。
陛下の奥方を強姦するなど。
しかしもし陛下がお子様の禍を企むならば、
彼の継母の物語のために。
陛下にもきっと降りかかるでしょう。
老人の生涯に起こった事と同じように。」
皇帝はいいました。「私は師に命じます。
その事の起こりようを話しなさい。」
「陛下。」レンチュラスは言いました。
「最愛のイエスにかけてお話しません。
陛下のお子様の絞首刑が中止にならなければ。
彼は再び連れ戻され、
一晩中置いておかなければなりません。
明日まで、夜が明けるまで。」
皇帝は直ちに命令をして
その後王子は歩き出し
皇帝の命令によって
王子は塔の中に導かれました。
レンチュラスは喜びました。
そしてすぐに彼の物語が始まりました。
卒論バージョン、SOUTHERN VERSIONと比較


十五編の枠組み物語集 目次


a Japanese translation  和訳

6.木曜日 3番目の師レンチュラスの第6物語 井戸

a English translation(英訳)


Page39, 1333-1367

  一人の男には妻がいて、
彼女を彼自身の命のように愛していました。
彼女は若くてでしゃばりでしたが、
その夫は年をとっていました。
彼のベットの快楽は少なくなり始めました。
すると彼女はもう一人の愛人を連れて来たのであります。
ベッドで彼ら夫婦が共に眠った時、
妻は起きました。貴方が聞き知るであろうことの様に。
寝ていた彼女の夫の側らから。
ほどなくして夜明け前に。
門の扉の外、
彼女は彼女の愛人とそこで会いました。
一家の主は少しの間に、
彼の妻がいないのに気づき彼女の裏切りを考えました。
彼は石のように静かに起き上がりました。
そして扉へと彼は静かに歩き出しました。
またこっそりと探り始めました。
そして彼女が姦通をしていることを知りました。
それで石のように静かに自らが行き、
直ちに扉を閉めました。
  彼らが巧妙な策略をやってのけた時、
そして思う存分話したのですが、
妻は扉がしっかりと閉められていることに気づきました。
その時彼女は非常に心配でたまりませんでした。
彼女は扉を急いで叩きました。
そして大声で叫び、
彼の首をばらばらに折るよう悪魔に祈りました。
扉にしっかり鍵がかけられていたなんて。
家長は横になったまま聞こえました。
そして彼の妻に答えました。
「妻よ。」彼は言いました。「おまえの思いどおりにするがいい!
おまえは悪しき行いに手を染めていたのだ。
明日おまえをじろじろ見るだろう。
町にいるのと同じ数の人々が。」
「嗚呼!」彼女は悲しみを表出し始めました。
Page40, 1368-1405
そして彼女の手を絞って、
「お許しください、貴方、私は貴方の妻なのですよ。!」
後生だから私を家に入れてください。」
夫は直ちに言いました。
「あそこへお前は急いで歩いて行くがよい!
全能の神が私を喜ばせてくれるなら。
おまえをここに来させるわけにはいかない。
我々の仲間の人達が皆各自、
ただおまえの体をじろじろ見ることになるまでは。」
妻は言いました。「願わくは金持ちの妻が栄えんことを。
私はそんなに長くこの通路にいるつもりはありません。」
  素早く瞬時のうちに、
彼女はトリックに集中していました。
扉の前で、私が貴方に話しますように、
大変深い井戸がありまして、
その辺りには石が一つ置いてありました。
人間のももと同じくらいのサイズでした。
本が物語るところによれば、
彼女はそれを彼女の両脇に抱えて持ち運び、
井戸の中へ彼女はそれを落としたのでした。
夫はそれを玄関広間の中で聞きました。
そして彼の若い夫人を可哀そうにおもいました。
そして彼女は入水自殺したのだろうと信じました。
それで直ちに起き上がり、彼の寝巻を着たまま
井戸へと歩き始めました。
幸福な生活をしていた男のように。
そして彼の妻を救おうと思いました。
その妻は十分狡猾でした。
そうであるからして扉に極接近してたち、
玄関広間の中へ彼女は歩き出しました。
そして直ちにその扉を閉めました。
その夫は非常に困りました。
彼は井戸で彼の妻を捜して、
彼の心を痛め害に苦しみました。
ところが一方彼女は彼女の暖かいベッドに横になっていたのです。
悪党らしい死、彼女は死ぬにちがいないでしょう。
このようにして真に受けるほど単純な夫の目に目隠しをし
彼女をそれだけますます愛していたのですから。
Page41, 1406-1442
そのようなものすべては結局あいにくなことになるのかもしれません。
彼が井戸で発見しなかった時、
彼はもはやそこにいようとはしませんでした。
彼の扉で彼は内側にいただろうに、
しかしそれはかんぬきでしっかり閉めてあったのです。
彼は扉を押して彼女に開けるように命じました。
やれるならやらせてみよと彼女はじっと横たわっていました。
  そのころ法律は非常に厳格に科せられていました。
もしも夫が売春宿で見つけられたならば、
彼は罰を受けるべきである。
そのために彼は殺されるべきである。
そのために武装した人たちがそこへ夜な夜な行ったものです。

[・・・・・原文空白箇所・・・・]

家長はすっかり不安に駆られました。
扉が固く締っていると知りましたから。
彼はノックして大変恐れました。
妻はそこに誰がいるのかと尋ねました。
夫は非常に怖がりました。
ノックしているのを彼の妻が彼のベッドで聞きつけたのですから。
そして言いました。「夫人よ、私がここにいるではありませんか。
貴方の夫でなおかつあなたの貞節な夫、
起きてかんぬきを引き抜いて下さいな。
良き妻よ、だから私を入れて下さい。」
「嗚呼、裏切り者。」その時彼女は言いました。
「貴方の行かなければならない所へ足早に立ち去りなさい。
貴方の遊女のいるところへ、
貴方がいた家の方へ再びお戻りなさい。」
やさしく話すために彼は彼女に注意を払いました。
なぜなら彼はそうすることが必要だとわかりましたから。
「夫人よ、私をベッドの中へ入れて下さい。
そして貴方は怖がらないでいいのですよ。
聖ニコラス卿によってなのですから。
私はおまえ、貴方の邪悪な振る舞い許してやりましょう。」
「いいえ、裏切り者。」その時彼女は言いました。
「確かに、貴方は行ってください。
権力に満ちた神かけて、
今夜ここに貴方を来させてあげません。」
  彼らはお互いに小声で話したにもかかわらず、
Page42, 1443-1480
夜警が聞きつけそこへ来て、
一人が言いました。「貴方は何を、
この時間にここに立って?」
「嗚呼、夜回りどの。」彼は言いました。「これはこれは!
それでは私は貴方に何故なのか理由をお話いたしましょう。
私は忠実な子犬のスパニエルを飼っていたのですが、
そして私は何故それが立ち去るのかわかりません。
私の思案が子犬が外で吠えるのを聞いたのです。
それで彼を中に呼び入れようと外に出ました。
ところが私の妻はかんぬきをかけてしまいました。
扉に冗談で。
出て行け、神の名において!」
「いかにも彼は嘘をついています。」彼の妻は言いました。
「不義密通の夫の暮らし!
私は私の心の入れ替えについて沈黙を守ってきました。
彼がときには悔い改めていただろうにそうしなかった彼の行状について。
したがって今すぐに貴方は彼を逮捕しなければなりません。
彼に判決を言い渡しましょう。」
夜警はもはや迷ってはいられませんでした。
夜警達は彼の回りを囲んで取り押さえました。
そして町中に連行して、
彼を投獄しました。
それで彼は大いなる悲しみをもって一晩中横たわりました。
そして翌日に彼の判決を受けることになっていました。
こうして彼は彼の判決を言い渡されました。
かくて彼の妻によって彼は殺されたのでした。
  「そのようにして陛下、皇帝陛下も
きっと陛下の名誉を失うでしょう。
陛下の御子息の命を殺害なされば、
陛下の奥方の物語のために。」
皇帝は言いました。「やさしいイエスによりて、
汝の物語のために、レンチュラス卿、
今日彼の命は助けてやろう。
私の妻の物語のためではなく。」
その時皇帝は命じました。
彼の息子を塔に連れて行けと。
彼らは直ちに命令どおりにしました。
Page43, 1481-1515
その時レンチュラスは喜びました。
  王妃は国王が執行を停止したことを理解し
激怒の余り彼女はもう少しで気がふれるところでした。
皇帝陛下の心は変わってしまわれた。
そして王子は投獄されました。
その日一日中皇后は彼女の目的に取りかかろうと機知の高揚を図りました。
彼女はどのようにして夜の前に、
すべて新作の物語を案出できるのでしょうか。
王子の殺害を企てるために。
彼女はすでに解決していました。
彼女が彼を寝かせた時に。
何度も彼女は嘆息しました。
そして押し殺したような声で言いました。「陛下、私の頼みを聞いてください。」
皇帝は横たわっていて聞きました。
そして彼女に何故そのように彼女が振る舞ったのかと尋ねました。
「陛下。」その時皇后は言いました。
「私に災いあれとは不思議ではありません。
いまや私の悲しみがわき起こる運命なのです。
今すぐ私たちはお別れしましょう。
私はもうこれ以上ここには居られません。
陛下に降りかかることになる不運を見たからには。
天にいる全能の神によって、
陛下の息子と七賢。
彼らは皆完全に意見が一致してます。
確かに、陛下は殺されるでしょう。
しかも陛下、陛下が私を愛さなければ、
陛下に降りかかるに違いないのです。
執事の人生に起こったような、
国王が執事の妻と結婚したという事です。
「妃よ。」皇帝は言いました。
私は汝に命ずる。愛人、
私にその出来事を語ってください。
彼はどんな人でどのような事柄でしたか。
「しかと。」 皇后は言いました。
「陛下は未来のフランス国王の様相をお聞きなさい。」
卒論バージョン、SOUTHERN VERSIONと比較


十五編の枠組み物語集 目次


a Japanese translation  和訳

7. 第4夜 王妃の第7物語  執事

a English translation(英訳)

 

Page44, 1516-1550

  かつてイタリア、アプリアに一人の王がいました。
その王はこともあろうに女性を嫌って(Introduction3参照)
生まれてこのかた
彼は一度たりとも妻を持とうとしませんでした。
これはある本に書かれているのですがローマで、
彼は重い病気にかかりました。
その病気が一面に進み、
彼の全身は腫れあがり
からだ全体がふくらんでしまいました。
彼の男性生殖器のことはだれにもわかりませんでした。
イタリア、サレルノへ彼は使者を送り
有能な医師を求めました。
彼は手を取られて
部屋の中に案内されました。
王様を喜ばせるためでした。
彼は病気の王を診察すると
直ちに王の尿を採るように頼み
彼は尿検査をするとすぐに
王様の病気がいずれにあるか彼はわかりました。
そして言いました。「サー、陛下は何も怖がることはありません。
本当に、陛下の病気の治癒をもたらします。」
王はこの知らせを聞いて
一時慰めを得ました。
イタリア、サレルノ出身のマスターは賢く敏速に職務の遂行をしました。
つまり彼の薬を十分に作り
直ちに彼はそれを王に与えると
彼のはれがひきました。
「陛下。」医師は言いました。
「陛下は婦人を妻として受け入れる必要があります。
夜のつれづれの相手とするためにも。
もし私の陛下にほどこす治療が正しければ。」
王は言いました。「栄あれかし。
貴方の意のままそのようにいたそう。」
王は彼の家令を呼びました。
Page45, 1551-1587
  その執事は家事と家政の一切を管理しておりました。
王は彼に命じました。「お前は見つけねばならない。
しかもすみやかにお前は急がねばならない。
バラ色の顔をした美しき淑女。
ベッドに横たわり私と夜の伽をする、
貴族の家柄の生まれで
若い貴婦人を。」
「陛下。」家令は直ちに言いました。
「全力を尽くして、私はそのような方を見つけましょう。
陛下のご病気の噂で、
彼らは死ぬのではないかと恐れるでしょう。」
王は言いました。「お前は思う事を述べたが、
金と銀でお前は彼らをそそのかしなさい。
彼らに沢山の金銀を与えよ。
私は十分金持ちである。」
その時執事は知りました。
王がお金を与えようとしていることを。
彼は立ち去り帰宅して
彼の妻の手をぐいとつかみました。
それから言いました。「聖べネディクトによって
おまえは今晩王のそばに横たわり
きっと金銀を得させよう。
そして罪を赦免される。」
「確かにサー。」彼の妻は言いました。
「今や貴方は愛していない私のいとしい人です。」
  彼は貪欲であったので
彼の妻を王に捧げることにしたのです。
執事は王の寝室に入って行き
言いました。「陛下、私は成功しました。」
私は身分の高い貴婦人を得ましたが、
彼女は多くのお金を持ちたいと欲していました。
また彼女は部屋を暗くすることを希望しているのです。
彼女は上品な男(穏やかな男)を見たくない思っています。
「誓って!」王は申しました。
「松明を消してくれ みなさん。」
彼は誰も彼もみなに明かりを消させました。
それからすぐに彼の妻の手を取り連れて行き、
Page46, 1588-1625
王と添い寝するベッドへ彼女を導きました。
欲ばりな執事が強いた不貞。
一晩中彼女はそこに横たわりました。
夜明け前まで1マイル歩く時を過ごしました。
終夜彼女は嘆息し悲しみを感じながら。
王は彼女を何も喜ばせることができませんでした。
  執事は夜明けを恐れていました。
だから王の寝室へ来て
言いました。「陛下、あらゆる方法で
陛下はその婦人を起こさなければなりません。
王は言いました。「ヨハネによって
今すぐに私は彼女を行かせるわけにはいかない。」
王は彼女を日の出まで引き留めていました。
しかし彼が見るや否や
まさしく執事の妻がいたのでありました。
そこに突如不和の種が出現しました。
その時王は言いました。
何やらこみあげてくる怒りがありました。
「執事、そう神はお前に命じたのか、
この行いをさせたのは誰だ。?
お前は私の宮殿で見つかり
太陽が地平線に沈んだ時
他に法がなければ
お前の首をしめつけて吊るしてやろう!
いいかい、即刻
今日限り私は二度とお前の姿を見なくてすむのだ。」
執事はこの言葉に恐れおののきました。
彼はもうわざわざ王宮に住もうとはしませんでした。
庭園から国外へと彼は道をたどりました。
それきり彼がどうなったのか王と廷臣たちは消息に通じていませんでした。
  「聞いてください、マイロードサーエンペラー
どうして彼は自らを辱めることをしたのでしょうか!
執事は彼の貪欲のために
彼の妻と彼の仕事を失いました。
確かに、サー、陛下も恐らくそのようにして
陛下のための三文短編小説で描かれたあくなき野望を抱くでしょう。
その邪道に引き入れようとして学者達が陛下に忠告するのです。
実のところ、私はこれ以上住めなくなるでしょうけれども。
Page47, 1626-1662
陛下がどうしても名誉を失うまいとしても
陛下の息子は皇帝になります。
私は現状のままを陛下に述べています。
今でしょう、陛下の意志を貫くのは。」
皇帝は皇妃に言いました。
「カトリックによる朝の祈り(七聖日課の最初の祈り)とミサを捧げよう。
私は明日どんなパンも食べません。
嘘つきが死んでしまう前に。」
  朝皇帝は命令しました。
彼の王子を塔の外に連れ出してから
彼を裁判にかけました。
直ちに「ギルティ―」すなわち彼は有罪となりました。
これ以上無罪の主張はないので
彼らは皇帝の命令を実行するだけでした。
王子が宮殿の外側にいた時
彼は偶然マラダス師に会いました。
師は広間の中へ入って行き、
皇帝の前に歩み寄り
言いました。「嗚呼、悲しいかな皇帝陛下、
陛下は自ら威厳をそこねて裁判を行い、
陛下の息子を殺す強行手段をとろうとしています。
法律の再審手続きもなしにです。」
「確かに。」皇帝は申しました。
私は裁判長や臣下らに王に背いた悪人どもを殺害するよう命じたのだ。
おまえとおまえの相棒達、おまえは不信の師である。
彼らを絞首刑にしてやる。おまえもだ!」
  「疑いなく、サー。」マラダスは言いました。
これは奇妙な事件です。
王子の命を奪うことを考えて
陛下のワイフが物語を仕組んでいるのです。
そしてその道筋に沿うならば、皇帝陛下、
神はそういう高い地位の陛下にも降らせます。
ある老人がすんでのところで被ったと同じような災難を、
もし彼の妻に対して懲罰がなかったならば。
その処罰は猶予することなく
彼女に十分な侮辱を加えました。
皇帝はマラダスに申しました。
Page48,1663-1673
「私にその事例を話しなさい。」
生まれてからまだ聞いたことがないのだから、
一人の老人が一人の若い妻を折檻したなんて。」
「陛下。」 マラダス師は言いました。
「もし陛下がこの事例をお聞きになりたければ
全能のイエスキリストによって
子供を呼びにやるべきです。」
皇帝の命により
王子は塔の中へ拘留されました。
そのため多くの人々はほっと胸をなでおろし
マラダスの物語が始まりました。
卒論バージョン、SOUTHERN VERSIONと比較


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