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2024年 翻訳中です。notes15


原書 THE SEVEN SAGES OF ROME (MIDLAND VERSION)

ローマ七賢物語 (ミッドランドバージョン) オックスフォード大学出版 2005

原文の解釈ノート

2321-6
6行和訳のみ しまいに学者達が聞き及んだのは/ 賢く聡明な人の存在でした。/ その名をマーリンといい/ 多くの医術を学んでいました。/ それ故七賢人らは直ちに彼をさがしに 行きマーリンを発見して/ 彼は学者に伴って皇帝の面前に来ました。/

D版の校訂者は学者達がマーリンを捜しまわるという別バージョンでは長い挿話をつめてページを 減らしている。 彼等は父親のいない子供を探すように言われついに父親のいないことを 嘲笑されている少年に出くわした。 (この挿話と"Arthour and Merlin, (アーサーとマーリン)の 挿話の類似性について参照:Campbell博士、Seven Sages p.175.note to I.2635ff
その場面は夢判断をしてもらうためにローマの学者の所へ行く道の途中らしきそのお国の男の到着によって 中断される。その男は旅に出た学者と共にいた少年マーリンに 黄金貨幣を与えるとマーリンがその男の夢を判じることができるのだった。

2346  And that reuys the thy syght, (And that deprives of your sight, それで貴方の視力を奪う。)
F版ではマーリンもまた皇帝の盲目は学者の宝塔のせいであると言う。
F版:1694-5
And ye schal neuer wyth eyen see,  (And you shall never with eyes see, 貴方は決して目で見ることは出来ない。)
Tyll the golde ydeled bee (Till the gold empty be, 塔が空っぽで金塊がなくなるまで。)

2366  That wyssys the to wykkyd werkys. (Who guides, or directs you to wicked deeds,or action. 邪悪な行動(道)に貴方を導く。
wyssys について 2人称の現在形の単数形がseuen clerkys (seven scholars) に使われている。 複数名詞が数(ここでは7)で修飾される場合に D版で時々見られるように。 前記808行の例も参照。

2386  And went to the caudron anoon- (And went to the caldron at once- そしてすぐ(魔女の使う)大釜に向かった。)
A版は書き足した。 2503: His heued was in to þe caundroun cast (His head was into the caldron cast  彼の頭は(魔女が毒を作る時に使う )大鍋に投げ込まれた。)

2389-40 
12行の和訳: 皇帝は申しました。「聖マルタンにかけて/ 私は忠誠をマスターマーリンに認めます。/ なおその上人が言う事ができる何でも/ 私は貴方の忠告通りに実行しよう。」/ マーリンは言いました。「陛下、私を成功させたまわんことを。/ それには陛下は貴方様の学者達を殺害しなければなりません。/ もし私が勧めましたように彼らを葬り去らないと/ 陛下は決して両目で見えるようにならないでしょう。/ ローマの街の外の彼方に、確かに/ 彼ら数名が別れを告げることになります。/ 皇帝は申しました。「繁栄あれかし。/ 私の顧問として生活を送る者は誰もおりません。」/

マーリンが皇帝の助言の頼みに応じて 残りの6人の学者を殺すように彼に話して答える点でフランス語に最も近似している。 他の中期英語原文は七賢人の死までの場面をカットする。

2404 
Than were the walmes agoo, (Then the waves were gone.  そして波は去った。)
他の中英語版は、皇帝は再び目が見えるようになったと述べて ここで終わる。 (C版とR版でマーリンは皇帝の両眼を洗う。) F版は学者の夢判断で儲けた宝庫の黄金貨幣は貧しき人々の中で分け与えられたと語る。 皇帝は視力を回復しマーリンは皇帝の相談役として彼の側近に踏みとどまった。 古フランス語バージョンは 発病(失明)した場所が馬を駆ってローマ郊外に乗り出した所で 他版(城門から出発した時)と異なっていたように 我々が編集したD版には次のコーダ(締めくくり)がある。 そこでは皇帝はローマ郊外へ馬で出かけ 彼は城壁の外側で現に見えている様相を発見する。

2444 That was hoten maystir Iesse (その人はイエス師と呼ばれてた。)
F版は 1061: Lentylyon his name was. (彼の名はレンティリョンだった。) D版の第12物語はF版では第6物語である。

 イエスの第12物語  (2024,9月〜ハロウィーンの時期に和訳) 

2467-616 Vidua ("The Widow" 未亡人)

2469  Hyt was a knyght, a riche schyreue, (It was a knight, a rich sheriff, 一人の騎士が金持ちのシェリフ(英国史では町や地方の長官、 荘園の農奴の監督者)の地位に居りました。)
古フランス語バージョンA※では、 the sheriff lives en loherainne (36.002) (シェリフはloherainneに住む。)

2470  That was lot hys wyf to greue: (That was unwilling make his wife sorrowful: 妻を悲しませたくなかった。 )
他のバージョンはどれほど夫が妻を愛し そして(F版以外)どんなに彼女が彼を愛していたかを読者に教えてくれる。
F版はさらに詩を練る。
1080-3
He wolde neuyr let hur goo (He would never let her go  彼は決して彼女を行かせなかった。)
Halfe a myle hym fro (Half a mile him from 彼の荘園から 半マイルの道のりを)
To church nodur to chepyng (To churche neither to market or act of buying 教会へも市場にも
On hur was all hys moost lykyng (On her was all his most pleasure, or liking or dainty, 彼女にとってそれが何よりの彼の喜びだった。 或いは好きなことだった。或いは上品なことだった。)

2472   And in hys honde helde a knyf. (And in his hand held a knife. 彼の手にはナイフが握られていた。)  他のバージョンではシェリフ(騎士)は 最近よりによってこのナイフを与えられた。

2475  With a lytil croume knyfe (With a little curved knife 小さな湾曲(カーブ)したナイフを使う(ナイフを握る掌や手首や指などを少々曲げてしまった。 )  croume, croumbという形容詞はMED(中期英語辞書)では ありふれているがこの特殊な用法についてはD版のみ引用している。 古フランス語: courbe : (curved , bend)

2476  The schyref woundyt hys wyf, (The scheriff wounded his wife, シェリフは妻を負傷させた。) 
負傷箇所: 親指 → 古フランス語バージョンA※、中英語E、B版
手の指、小指 → 中英語C, R版
胃、腹 → 中英語A, Ar版
古フランス語バージョンA※において思いがけない不幸な出来事が 起きた時夫は矢を作っていた。

F版には、妻が梨の皮をむいて怪我をする場面がある。 1084-1093 6行の和訳:
ある日彼らはテーブルに座っていた。/ 彼女は梨が食べたくてその皮をむいていた。/ ナイフの回転向きを間違えた。/ そして彼女の手を強く打った。/ すると彼女は驚くべき速さで出血した。/ それで彼女は梨を投げ落とした。/

2477-8
And took to hym so myche sorowe (多くの悲しみを彼に与えた。)
That he deyd oppon the morowen (それで彼は翌朝死んでしまった。)
古フランス語バージョンA※、中英語A.Ar,B版において 夫が死んだのは心臓が弱かったからである。

2479-82
For also mykyl as he slew hymseluen, (For also much as he killed himself, 彼は自殺したも同じだから)
In kyrkeӡarde men wolde hym nout delue: (In churchyard men would not bury him: 教会墓地では人々は彼を埋葬しようとしなかった。)
He was beryd bon and fel (彼は骨と肉の全身を埋められた。)
Withouten the toun at a chapel, (Outside the town at a chapel 町外れのチャペルで)

夫が自殺したという理由で教会墓地への埋葬を拒否されたのはD版だけである。 D版はその夫が街のはずれのチャペルに但し新しい墓地に埋められている古フランス語バージョンに近似する。 他の中英語版では 埋葬された場所が特定されていない。

2487-8 
Of hyre frendys that were thare, (Of her friends that were there, そのお墓にいた彼女の友達たちの事だが)
Baden hire lat be hyre fare, (Advised desist from her behaving  彼女にその行動(墓に留まり離れぬこと)をやめるよう忠告した。)
他のバージョンでは(この箇所がD版よりさらに短いF版以外) 家に帰って新しい人生を始めるよう彼女に説得しようとする 友人達の試みを詳述する。

2495  Lete kyr dwel al hyer stille; (Let her remain as long as she wishes; 彼女が居たいだけそっとしておこう)
[....恐らくここに欠けているのはstilleと脚韻語のある1行だけだろう。 ...(写本に空白はないけれども)...]
Wright(ライト博士:1810-1877)は stille を scille と誤記した。行 (t のクロスストローク:(十字に交差するひと書き) がはっきり見えて MED(中英語辞書)はその後 このstilleをskilの項目下で al her skil:'as long as she wishes' 彼女が望む限り というフレーズとして注解した。

2499  And made hyre bede bysyde the graue. (And made her house of prayer beside the grave. 墓の傍に祈りの家を建てた。)
その他の版では彼女の友人達が墓のそばにlogde(小屋)を造る。 (lodge; 英方言のことわざ: Earth is our lodge and heaven our home: この世は仮の宿、天国こそ我が住まい。
F版ではそれを彼女自身が作る。 1140: Sche made hur a chaumbur on hys graue (She made her a chamber on his grave. 彼女は彼の墓に部屋を設置した。)

2506  Scho wype and hyr hondys wronge (She wept and her hands wrung 彼女は泣き手を絞るように揉んだ。)
[...1行欠...写本に空白なしだが... ]
多分2506行と一致する定型句の後半部分だろう。
570-1
Scho wippe and hir hondis wronge, (She wept and her hands wrung, 彼女は泣いて手を振り絞った。)
And ofte syked sore amange. (And sighed bitterly again and again. そして繰り返し繰り返し苦苦しくため息をついた。)

2510  Ther were thre thefys anhangede. (There were three thieves put to death by hannging./  3人の盗人が絞首刑に処せられていた。)
F版ではたった一人である。 1118: Then was þer takyn a thefe strong. (Then was there taken a thief strong. 絞首刑の木に吊るされる一人の強健な泥棒がいた。)

2521 
4行の和訳: そしてすぐにその女性に挨拶した。/ 彼はすぐに火のそばに座った。/ そして言った。「マダム、失礼をお許しいただき / 私は去らねばならぬがしばらくの間暖を取らせてほしい。」/
その他のバージョンにおいて 刑場の一夜番の騎士は彼女のlodge:小屋に 入る許可を求め彼女は拒絶する。 彼がもう一度尋ねると彼女は彼を家に入れることに応じた。 C, E版において彼はまず3回断られる。

2531-2
Hym thout hyt was a fayer leef, (He thought it was a beloved person, 彼は最愛の人だと思った。)
And he was withouten a wyf, (And he was without a wife, それにまた彼には妻がいなかった。 )
D版の未亡人に対する騎士の感嘆はフランス語版に近い。 Li chevaliers regarda la dame, Ele fu belle et colorer comme rose, (中世騎士は婦人を見た。/ 彼女はバラのように美しく色鮮やかだった。)
しかしA版はD版と異なり彼が未婚であったとは伝えていない。

2533-42
10行の和訳: そして直ちに恋する女性を誘い始めた。/ すると彼女の心は甘んじて受け入れ始めた。/ そして彼女は名も知らぬ顔によって学んだ。/ そして彼は自分が騎士であることをよく知っていた。/ それで忽ちその婦人は始まった/ その人への愛を持つために/ 真夜中になるまで/ 『女性は仰向けに寝かされた。DeepL機械翻訳』/ 『騎士はその上に横たわっていた。DeepL機械翻訳』/ こうして彼は婦人の愛を得た。

D版の騎士の求愛は彼が婦人に話しかける他のバージョンとずいぶんと違う。 それは 喪に服していても彼女の夫を現世に連れ戻すことは出来ないし新しい生活を始めて他の騎士を愛することが できるといった語り口である。婦人は決して他の人を愛するつもりはないと言う。 しかしながら F版において 騎士が炉火で体を暖めていた時の会話について 言及されず彼は絞首台を見に戻る。

2555  "Sire, quod the lady tho, (サー、その時婦人は言った。)
他のバージョンでは婦人は彼に彼女と結婚してくれるなら 助けてあげようと申し出る。(E,B版で 彼女は彼に恋人になるよう頼みその後 彼が結婚を申し込む。

2560  And dyggyn vppe the cors anoone, (And dig up the corpse at once, それならば直ちに死体を掘り起こすがよい。 ) D版は唯一 死体が婦人の夫である亡骸の在り方として決して触れない。 F版を除く 全ての原文において婦人はその肉体を例えば my lord(私の夫、背の君、領主、主君、貴族・・) と言う。 F版においては物語の最後に騎士は婦人にこの死体は 彼女(貴女)の夫ですかと聞く。 D版の未亡人はその死体をhym, he (彼を[に]、彼)と呼称する。