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原書 THE SEVEN SAGES OF ROME (MIDLAND VERSION)
ローマ七賢物語 (ミッドランドバージョン) オックスフォード大学出版 2005

  INTRODUCTION   和訳

1. 中世文学 ローマ七賢物語概説

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 ローマ七賢物語は、ほとんどすべてのヨーロッパ言語に翻訳版のある最も通俗的な中世文学の一作品 でした。枠組物語15編を選集した書物でその物語は、ローマ皇帝の皇后と七賢人によって順を追って話されます。 継子王子に対して皇后が訴えた暴行未遂の罪の申し立てを正当化しまた反論するためにそれぞれが 構想した物語です。
 ローマ皇帝ディオクレシャンは、子供の教育を始めなければならない時期は、息子が7才になる時と 決めます。その任務は七賢人の肩にかかり、七賢人は王子をローマ都市郊外に建てた特別宮殿ヘ連れて 行きます。その内壁は教養七学科(中世における主要学科は文法、論理、修辞、算数、幾何、音楽、 天文)の聖像で装飾されています。子供は物覚えが早いのですが、彼が家にいない間に彼の母は死去 し彼の父は再婚を勧められます。新しい皇后は王子殺害を計画し始め彼の父に王子を呼びにやるよう 説得します。黒魔術をもって翌7日間にもし王子が言葉を発すれば王子は死ぬという呪いをかけます。 しかし、ローマへ向かう前に賢人達は運星を占い皇后の策略を発見します。 王子は沈黙を守ることを決心しそして7人の学者達一人一人に7日間のうち一日毎に彼の命を救って くれるよう頼みます。 ローマでは、無言の王子に彼の父が怒り、皇后は彼をしゃべらせることを約束して彼女の継息子との 私的談話を要求します。 彼らだけになると后妃は王子を誘惑して命をねらおうとしましたが、全く黙ったまま退けられ彼女 は彼女の衣服と顔を引き裂いて王子をレイプ未遂罪で訴えます。

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皇帝は直ちに死刑を宣告しますが、伯爵や男爵達の求めに応じて執行は朝まで延期されます。 それで、后妃は彼女の告げ口の妥当性を認めて息子を処刑するよう一夜一話を夫に説いて聞かせ 始めます。唯一王子の命を救うには、翌日七賢人のうちの一人の介入によって后妃の物語に反論する 各々一話の物語で彼女のもくろみを挫くしかないのです。大体、皇后は息子や打算的な助言者らが 王位を簒奪することについてのストーリーを語り、一方賢人達は悪女物語を適用して語ります。 第七日最終日14物語の後、王子はとうとうしゃべります。彼の無実を宣言してそれを彼自身の物語 で解き明かしながら。皇后は彼女の黒魔術を用いた罪を白状して処刑されそして皇帝は決して再婚する ことなく死ぬまで汚れなき善行の生涯を送ります。
 この大衆向け物語の歴史は、すでに印刷の時代になっていた12世紀中葉以降フランス語で書かれた 初版が残存しており、それから今日まで10世紀近くにわたっています。 実際は12世紀よりもさらにさかのぼると推定します。なぜなら七賢物語は、おそらくB.C.西暦紀元前 5世紀の作品<"The Book of Sindbad">『シンディバード物語』(アラビアンナイトの船乗り シンドバッドの冒険ではない)から改作され、たぶんペルシャ語、ヘブライ語、インド語起源らしいからです。 西洋大ブリテン、英国においては、中期英語韻文版ばかりでなくウェールズ語版、 中期スコットランド語版の七賢物語バージョンがあり、中期英語散文体の七賢物語もあります。 中期英語韻文体のバージョンに直接つながる種本や写本は発見されていません。(次ページ図参照)

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中期英語『中期英語とは1066年のノルマンコンクエスト以後15世紀後半頃までの英語の名称. ウィキペディア』 で書かれた現存する8つの写本(作者不詳)___重要なナンバー_とそれら写本原文の関係の考察は、 おびただしい韻文詩行が失われたに違いないことを(欠損、省略、断片的等、xxxxxx印などから) 示唆しています。さらにこの作品が当時の民衆に向けて書かれたことを証しながら。 中期英語"Seven Sages"の現存している最古の写本は、有名な"Auchinleck写本『National Library of Scotland スコットランド国立図書館蔵』であり写本年代は1331年-40年と推定されますが、作品自体 書き上げられ中期英語に入ったのは14世紀よりもう少し古くて1275年とKillis Campbell氏は推定 しました。
 この作品は明らかにチョーサー(Chaucer)やガワ―(Gower)のような同時代の中世イングランド 詩人によって読まれ枠物語集を執筆するうえで参考となりましたが、現代においても特に『カンタベリ ー物語 (The Canterbury Tales)』或は『恋する男の告解(Confessio Amantis)』と比較した時 七賢物語は(Seven Sages)はまだあまり知られていません。 一つの問題は、批評家達が詩風、詩形、韻律などのジャンルで作品を分類したむずかしさです。 詩の構造に関して物語集としての定義は明確で最も無難に書かれています。 内容に関して他の枠物語集と同じように多様な精選された物語を含有しています。 最初の大変短く簡単な第一物語「木」(The Tree)から最後のそれよりもずっと長い物語「予言」 (The Prophecy)までに及ぶ物語題材は中世ロマンス文学(中世騎士物語、冒険物語、恋愛物語 驚異空想物語、ミステリアス物語等)の伝説に典拠があります。 額縁となる物語の中に何種類にも分類される物語を枠組みした物語形式を時にロマンス"a romance" と定義されます。しかしながら、その系統の七賢物語は他の物語集を除いてセッティングされたいわば ストーリーが一層深くなってロマンスアンソロジー,”romance anthologies” (ロマンス名詩選集) の部類に入っています。

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この枠組み物語のストーリー自体は一族と政治の安定、血統と継承権を起因とする訴訟に対して脅威 となる皇后と王子の権利を剥奪された少年が相続権を回復するという陳腐な主題を提示する七賢人が 枠物語をつなげます。それは下記のような多くの中世ロマンスとの共通点です。
1"Floris and Blancheflour" 「フローリスとブランチフルール」
2"Bavis of Hampton"     「ハンプトンのビーヴィス卿」
3"King Horn"        「キングホーン」
4"Havelok"        「ハヴロック」
5"The Reinbrun section of Guy of Warwick"
「ザレインブランセクションオブガイオブウォ―リック」

その上、七賢物語は種々のロマンス写本と関係を強めながら交わります。 最も顕著なのは、中世英詩"Sir Degare" と上記1"Floris and Blanchfleur"の間から 七賢物語A版 "the Auchinlec" 写本のロマンス断片物が発生し、 上記2"Bavis of Hampton" と 5"Guy of Warwick"の間から 七賢物語F版 "Cambridge, Univerasity Library,MS Ff.2,38 写本のロマンス断片物が 発生します。 [参考:昭和時代の本の中で金子健二氏は『七賢物語は何れも或る英吉利の中世紀本を種本としたもの である。』とその由来を著しました。] その詩形に関してもまたロマンスに流行した"the octosyllabic couplets" 8音節2行連句を用いて、 そして言葉に関しても長短強弱共通フレーズと押韻リズムの結尾句の繰り返し語法に則ります。 しかし七賢物語は、この紋切り型のロマンススタイルにおいて中世ヨーロッパ地方で流行った詩風の 特徴の多くを示していません。
 批評家達にとって様式が七賢物語を書き上げたのか疑問です。物語集なのか、中世ロマンスなのか、 或は両類型でありうるのか? しかし読者にとっては何がひどく面白いのかが問題なのです。  

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中世そのままの原文にはその時代の物語をするにあたって違う位相や様々な種類が沢山収集して あります。さらに、枠物語の出来事をその登場人物達と9人の語り手達は異なる見方で9人の視点から 描くように演じます。 一方においては、例えば七賢物語のストーリーは反女権拡張主義の説話 "exempla" 『exemplumの複数形:中世の説教などに用いられた道徳的物語。研究社 新英和大辞典 第6版 p.851』 から幅広くストーリーの筋を引き出します。家に入ったり出たりする女性の巧妙な策略へのユーモアに 富んだ訓戒などは中世を通じて数えきれない物語集が種本としています。それでなぜある批評家達が 中世ロマンス系統の作品よりむしろこの教訓的ストーリーに焦点を合わせたのかが容易にわかります。 お決まりの登場人物としての七賢物語は、枠物語を明らかに物語集のジャンルに照らして見ます。その 聞き手である皇帝は何者なのか?  "Puteus"(第6物語、井戸)、"Avis"(第10物語、鳥) 老年期により一層若い女性と2度目の結婚をする"senex amans" (老人 )など滑稽な物語は無数 です。皇帝はその事柄、感情を描写する文脈の前後(context)で常に姦悪な動きをするような ストーリーの中の愚かしい夫ではないのです。 また他方においては、枠物語は中世ロマンスのようにも読んで聞かせます。王子は口が聞ける ようになった時予言物語を話す方を選び、そのストーリーの息子と彼自身を同一視しながら 王子自身がこんな風に解釈します。予言物語の中の父はいつか子供が彼よりも偉大な有名人になる だろうという予言を避けるために子供を殺そうとするのだと。

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選集最後の物語にふさわしく王子が身の潔白を証明するために選ぶストーリー"Vcticinium" (予言) は、"The Seven Sages"(七賢物語)の背景から際立って傑出した中世ロマンスジャンルです。
  けれども、皇后と七賢人の見解と韻文物語のジャンルの交錯は、ストーリーコレクションを読者が 興味を持ち続けて一話づつ読み通すための文学的手法以上に、プロット(出来事の原因と結果)の核心 です。七賢物語のジレンマは、兆候を予言する夜空の星々を七賢人のうちの一人カトン師と王子が 巧みに解読した問題中心です。(reading sign) そのプロットは、皇后による暴行未遂見掛け工作(彼女自らが服を裂き顔を引っ掻く)次第です。 だから皇帝は目で得られたこれらの痕跡(visual sign) を読み取らなければなりません。 ちょうどそのとき彼は妻と七賢人が話す物語も聞かねばならぬと主張します。 星占いの七賢人と王子、魔法の皇后、双方の意見を聞いて彼は正しい判断を下さなければなりません。 皇后は皇帝の息子にいきなり襲いかかったのかどうか、さもなくば国王が目で見て本当だと知っている ことは嘘なのでしょうか?  真偽を伝えている中世詩を翻訳するのは困難な探求です。 要するにその原文において物事は見掛けの通りであるとする巧妙な操作者は女性です。
 この形成で、他と区別して優れた特色を中世ロマンスに与える "Vaticinium" 「予言」は、 選集結尾の物語としての定位置からだけ得られたのではなく、その語り手の王子の状況からも 引き出されるのです。我々は、著作始まり部分で彼の教育についての記述を読み彼は特に秘宝や魔法に 通じる程賢くなったこと、そして彼の知恵は熟練した賢人のように星を判読する形を取ることを 知ります。 この判断能力は、王子が話すことを選択したストーリーの種類に反映します。 王子の開口間際まで、七賢人は彼の継母の証拠が疑わしいと思わせるために女性のぺてんストー リーを話しては王子を弁護してきました。 "Vaticinium" 「予言」はしかし、海上に自然美を求めた枠物語のシナリオは王子の解釈によって 読みこまれ作り上げられることで、物語をするという秘訣がシンドバットとは異なる漂流記に展開 していきます。 継母による強姦告訴が発端となった皇后の連続ストーリーは、七賢人と王子が彼の治世転覆を祈願して いると皇帝に思い込ませるように語られたので、年老いた皇帝の座が若い息子に取ってかわられは しまいかというすべての不安を引きおこしました。 "Vaticinium" 「予言」が、そういう懸念を認める王子の行路であるのは彼がストーリーの中で子供 (すなわち彼自身)に罪はない、若者は両親に取ってかわるよう運命づけられているのだからと それを明らかにしようと皇帝に話している間です。

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彼はこの目的のために中世ロマンスの種類を用います。
 今までのところでは、物語コレクションとはテンションです。 文学のテンションとは、『新批評の用語;wit,ウィット、paradox,パラドックス、irony,アイロニー などの作用によって生じる詩の効果的な統一。研究社 新英和大事典第6版 P.2532 tention 』 ならば、the Seven Sages 韻律詩七賢物語ではエネルギーが生じる矛盾した観点においてのテンションですが解決されます。 中心的な父と子の関係のジレンマに反して賢人彼ら自身の反男女同権主義の見解は必然的に限られたジレンマです。
※脚注: シンディバード物語ではシンディバードが王子の唯一の家庭教師で、七人の賢人達が王の相談役として後世に出現し 王子を処刑から救うのはシンディバードではなく彼らです。:
しかしそれにもかかわらず作品全体は「シンディバードの物語」か「ローマ七賢物語」かどちらでも 七賢人達の名前によって知られるようになりました。さらに女性の見解について、皇后の人物描写でな く女性達の物語はわれわれの注意に値します。同様に枠組み物語とは時としてそのストーリーを明白な 教訓的文脈に収めようとする苦心の作です。これら違った視点は後で編集者によって推敲可能な分野で した。そしてミッドランドバージョンの著者に何か特に興味を持たせる典型がありそれが物語ストラテ ジーの見地から中期英語版の中で最も原文の特徴をなしています。

 ("The Midland Version" ミッドランドバージョンは、1845年'Thomas Wright'トーマス・ライトによって編集 校訂され2005年'Jill Whitelock'教授によって編集がなされた新版がEETSから出版されました。)

中期英語ロマンスを編集した'Jennifer Fellows'の意見によれば近年、中期英語テキスト特に中世ロマンスの編集者たちは 『煙滅  金子健二氏のローマ七賢物語由来にある熟語』した作者原本を手に入れるような強迫観念的探究をせず 現存するテキストを究明する校訂者の適用を経て同じ詩の異本版の価値を認め始めました。

中世ロマンスのような大衆向け文学が読者を獲得すると・・・写字生はある原型の綴り字などに誤謬のない正確な写本を 伝えようとしなくなります。写本筆写者の改変は考え練られ構造的で彼らは話し言葉ばかりでなくその改変は転換、焼き直し 挿入、連続物語中の挿話断片の詩行全脱落にまで及びます。写字生の活動はもはや作者の意図と切り離して行うことはできません。 何故なら写字生彼ら自身は作者の地位にある人だからです。

 無論Fellow彼女自身が認めているようにすべての写本筆写者がそんなに建設的というわけではありません。例えば 「七賢物語」Dd.1.17, バージョン(東南のミッドランドで書かれたらしい)について、筆者は彼が写した原本の詩を 部分的に彼の出身地の方言に書き換えただけでしたが、その結果としてテキストにいっぱい異形の綴り方が生じ 二つの詩行末尾で原型が損なわれた韻を踏んでいます。