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2023年 翻訳中です。notes3


原書 THE SEVEN SAGES OF ROME (MIDLAND VERSION)

ローマ七賢物語 (ミッドランドバージョン) オックスフォード大学出版 2005

原文の解釈ノート

時系列比較 (注:265 の意味が明確になるように各バージョンについてプロローグ部分の文脈を追って読み直しました。

1.中期フランス語A,E,B版 (Southern Version)
1ページ詩行でフロレンティン王子が7歳の時に母皇后(Mylycent)が死んだ。 ローマから1マイルのタイバー川が貫流する果樹園内で始まった王子教育 6年目のある日七賢人が手に入れた16枚のグリーンJuyの葉を 各ステップに4枚敷いたベッドに横たわり奇妙な空間体験をした。 それに続く場面転換の詩行:Dioclesian þat was in Rome 皇帝ディオクレシャンはローマにいて 教会法令によって結婚しました。(by commun dome , by community decree,)
237-241行によれば皇帝は臣下が探して来た乙女(原文:dammeisele; 訳damsel)と再婚した時点では息子の存在を隠して家来がそれを彼女に伝えた。
Ne þing mai forfole be (Nothing may be conceal, 露わにならずにすむものは)
But God owen priuete  神、王自身の極秘計画のみ)
Som squier or som seriant nice( Some squire or some servent foolish ある愚かな従者あるいは召使が)
Had told þemperice (Had told the Empress, 皇妃に告げました。)
Al of þemeroures sone, (All of the Emperor's son, 皇帝の息子のことを)
.....................
Seue ӡer hit is þat þou me nome  (Seven year it is that you me take  貴方が私を娶って7年です。=前頁注の結婚期間7年)
And made me emperice of Rome,(And made me the Empress of Rome, そして私をローマの皇后にしました。)
..........
皇后に頼まれた皇帝が使者を七賢人のもとへ送るときの皇帝の台詞は、
297 Hou he had sped þis seue ӡer  (How he had spend this seven yeras   彼がこの7年間をどのように過ごしたのか知りたい。   cf.文脈を順にたどって王子の年齢は7+7+7=21?ではないのかと混乱しかねないというJill博士の注) 魔法使いは登場せずに(原文に魔術師を表す単語が見つからない)七賢人と王子が月と星に凶兆を見て皇后の策略を読み解きそれに打ち勝つ決意をした。 ボーイズ・セント・マルティン(þe bois of seint Martin)と呼ばれた庭からローマに向けて出発した。 以下略。

2. F版(The Seven Sages of Rome, Southern Version, Karl Brunner編集、 ペーパーバック Appendixによる)

皇帝の子供は7歳にして母(Ilacent)と死別。 女性と交際すると彼は考えを変えてしまうという理由で (原文:For womans Compeny myst change his þoӡt;) ローマ郊外にて7賢人から中世の自由七科教育を受け(原文:gramere, astronomye, fesykk, arcanetrykk, musykk, Retorykk, Cemetrye)男爵の助言を通じて 皇帝が再婚した頃には王子は天下で最も賢くなっていた。[16枚の葉とベッド天井空間テスト場面はない。多分写本欠損] ある日従者が言った。「マダム、よく聞きなさい。貴女が来てから3年、(原文:Hyt ys iij yers gon and come,) 貴女はローマ皇后になりました。 しかし我らの皇帝には七芸に秀でた子供がいるので貴女の子は非嫡出子です。 皇妃に詰め寄られて皇帝は塔に彼の使者を呼び ボーイズ・セント・マルタン(boys seynt Martyn )にいる7賢人に手紙を届けさせた。 この場面で皇帝の台詞は上記のA,B,Eバージョンと共通である。
277 "What he had lerned that vij yere?" (What he had learned that 7 yeras? 彼は7年間で何を学んだのだろうか? (王子がローマに出立して7年になるが 再婚してから3年間彼のことを隠しまた王子も知らされてなかった。) 七人の師達は空の方角を見上げてバンシラス師が
299-300 
If he speke to morowe yn bowre or yn halle,/ Hys stepmodur schall do vs hang all (もしも明日王子が城の広間でしゃべると彼の継母は我ら全員を吊るすだろう。)と言った。 『Jill博士の注によれば継母の有罪性の書き方がD版と比較すると一般論である。』

他のバージョンと同様に月と星から継母の奸計を予知して7賢人による7日7話の延命策を相談する詩行が連なり ボーイズ・セント・マルタンを出発した彼を騎士たちが広間に導いた。 以下略。

3. C版 『要約は金子健二博士訳を参考にしました。
 『王妃(Milisent)は崩じ、そして埋葬されました。』 王子が七歳になった時から七人の師達は彼に課業を授けました。第6年目に石蓮華の葉16枚を各4枚ずつ敷いた ベッドに横たわった王子をテストしました。王子教育第7年目の年に皇帝は妃を持つようにと 貴族らに勧めらます。
C275行:Þan war þai wed by comun dome (Then they were wedded by community authority,decision,decree,judgement, 彼らは皆人の賛威を得て結婚しました。)ローマの慣例で沢山の富を使いましたがその後起こった驚くべき事とは 『ただ露はれずに居るものは上帝自身の秘密のご計画のみであります。・・・・・ ある日のこと一人の愚かな僕が皇后に告げました。 皇帝の息子が皇帝の後を継ぐのですよ。・・・(皇帝の召使が告げた時点で王子は7+7=14歳)
悲嘆・・・・800行:それは彼女に万事抜け目なく後援しうる妖術使い(原文語彙:a wiche ; witch 魔女.女魔法使い、)でありました。』 皇妃は妖術使いと契約して速やかに王子殺害方法を試すことにした。『宮廷に入れる・・ 7日の日数が全く尽きてしまうまで・・・王子の最初の発言を以て彼らは死ぬことになる。・・・ しかし、七日間沈黙を守っていたならばそれ以後は自由に言葉を発し得る。・・・・・・』 皇帝を説得して二人の急使をローマ郊外の七賢人達の居る所へ送らせました。『王子が彼れ御自身御帰還相成ることを・・・・』 ローマ郊外の庭園で皇妃と妖術使いの陰謀を月と星宿のお告げによって予見した王子とその 一行はボーイズ・セント・マルタン庭園(Boys Saynt Martine)から出発してローマに向かい宮廷に着きました。・・・・・・

4. D版 (Midland Version)
ローマに一人の皇帝がいました。で始まるミッドランドバージョンの他の版にないプロローグの特徴は
妻の名前と脚韻を踏む{ gye, Eelie} 2行連句、.......(対句詩行)・・・・
スペルを変えた妻の名前と脚韻を踏む{ Elye,dye} 二行連句・・・・・・(対句詩行)・・・・
後妻の手段として魔術と死 {deth (文中の名詞)、,nigremancye} 2行連句・・・・・(対句詩行)・・・・・
スペルを変えた魔術と死{nigrimancye, die(文末の動詞) }の2行連句・・・・・・(対句詩行)・・・・
その間に連なる詩行の叙述を時系列に沿って読み進めることができます。
前者:
I.5-6 名前の対句1
Al the londe hadde to gye,(All the kingdom had to rule, 全王領を統治しなければならず、)
And hadd a wyfe that hight Helie. (And had a wyfe that called Helie. エリーと呼ばれていた妻が居りました。)

王子は7歳になったばかりだった。 七賢人登場、 美しい噴水がありローマから離れた場所にある王室の地所(原文:A royal estates) に学舎を建てた。 7年も経たないうちに王子は7賢人によって 4本の柱の下に各4枚づつの蔦を敷いたベッドで眠り目覚める不思議空間のテストを受けた。

II.223-224 名前の対句2
Hys modir deyde that hatte Elye, (His mother died that called Elye, エリーという名前の母が死んだ。)
As we schalle alle dye. (As we shall all die. 人は皆死ぬように。)

王子が学校にいる間に(彼は自由七科のうちで論理が得意科目だったという詩行がある。) エリーの死を述べる段階でアリストテレスの3段論法の大前提 'All men are mortel' 『全ての人間は死すべきものである。』を連想させる行は 死生観の教育のような二行連句である。

彼女の死後直ちに貴族から次の妻を娶るよう進言された皇帝は: 249行 Hee wedded hirre as the law was, (He was wedded her as the law) 諸侯達が探しに行って見つけてきた高貴な生まれの女性と法の下に結婚し幸福な生活を送った。  D版が他の版と違う点は亡き妻との間に次の皇帝になるべき教育を受けている子供がいることを 愚かな従者が直ちに新妻に告げるのではなく皇帝自身が語ったことである。 皇帝は彼女に言った。286行 He schal come home to you. (He shall come home to you.『彼はあなたのもとに帰ってくる。 DeepL機械翻訳』  =I will bring him to you. 私は彼を連れて来ます。) 皇帝は彼女の求めに答えて王子にメッセンジャーを送ることにしました。

III. 295-296  deathとnigremancye の対句1
295  On euyl deth mot scho dey! (She must die a evil death! 彼女は不吉な死に様に違いない。)
296  Scho purchasede thourugt nigremancye (She bring about by means necromancy 彼女は黒魔術の方法をもたらします。)

まず1行目のeuyl=evil 悪、災い、 deth=death 死 の直訳から 2行目のnigremancye=necromancy, 降霊術 (未来に何が起こるかを死者との交霊によって占う、 デーモンの悪霊、屍術etc,キリスト教は禁じていた。) となってハムレットの父の亡霊の如く亡き母の霊魂を呼びよせる黒魔術(black magic) なのかと飛躍しがちだが 1行目のdie:死は親元から離れ勉学にいそしんでいたので死に目に会えなかった少年の母エリー(Helie,Elye)の死ではなく、未来に死刑となる継母の死である。 そして このnigremancyeはC版の語彙 a witch (魔女)と照合すると necromancy よりも witchcraft (魔法、魔術)と訳した方がよいらしい。 他にはsorcery, occult art も同意義語である。  魔法使いが(D版原文にnecromancer:占い師、魔術師の語彙はない。)皇妃に与えた手段は 7日7晩もし王子からどんな言葉でも発せられたならば瞬時にして彼の心臓は粉々に割れるだろうという 魔法である。

310  皇帝が特使に言った台詞 : And saye that I ham gretyng sende, (And says that I have greeting sent, 皇帝は私は挨拶状を送ると言った。)
340 ローマ生まれのカトン師が言った台詞
The Emperour hase send vu sonde (The Emperor has sent us messge containing a sommons, command  皇帝は我々に呼び出し状、命令を含むメッセージを送ってよこした。)
送る側のgretyngが受け取った側のsondeに 語彙変化しているのは、王子と7人の師達がローマへの出立前にあずまやで月と星から 3日後に遭遇する奇怪な出来事を予見したというストーリーの順を追う工夫かもしれない。

IV. 344-345 nigrimancyeとdieの対句2
344  His stepmodir hase thorug nigrimancye  (His stepmother has by means necromancy[witchcraft] 彼の継母は魔法を使い)
345  So demed how the child schal die (She ordained how the child shall die   彼女はいかにその子を死すべきものと定めていました。)

 この行についての巻末部分のJill博士の注344-5は、 『Dだけが継母の死の脅威に対する責任について言及しています。』

338  I see in the mone (I see in the moon, 私は月を見る。)から始まり原文we haue.. we schl... 344-5行を含み...we schl....カトン師は長い台詞の最後に 王子は開口一番で死すそして我らも殺されるのだ、皇帝はby Ihesus イエスによって 我らを(vs)咎めると言ったが有罪は皇妃である。前述の対句の一行目のdeth(death)は皇妃 の死すなわち魔術で王子殺害を企んだ皇妃の処刑をナレーターが予告している。

354 王子の台詞から ”In a stere I see me lyche: (In a star I see my help,or rescure; 私は一つ星に私の救助を見ます。)  彼らは協議を以て王子は返答しないことや バンシラス日曜日からの一週間、 師達がおのがじし王子救命の物語を構想することを決めた。 それから皇帝の使者達を十分もてなして 翌日の夜明け頃にバンシラス以外の6賢人を残し 直ちにローマへとまっすぐに向かった。 王子が7歳でローマから出発して到着する場所はローマ郊外のとある庭園, そこで7年間学び その庭園から出発してローマに帰還するまでの経過において D版ミッドランドバージョン(Midland Version)には上記のすべてのサウサーンバージョン(Southern Version)に書いてある『ボーイズ・セント・マルタン』という名の虚構庭園はない。

★陳腐な物語の共通筋道は 家臣によって皇帝の秘密計画が漏れた。 七賢人と王子の占星術によって継母の奸計が漏れた。 七賢人も家臣である。

C版:a witch(魔女を味方につけた・・・・魔女狩り、魔女裁判)  D版:nigrimancye(necromancy:降霊術の語彙がある)

本文のNote訳注

287-290
The lady sayed thare [scho laye] (The lady said [she lay]夫人はそこに[横たわり] 言いました。
"Leue sire, this ilke daye  (Dear Sir, this same(very) day ディアサー、このまさに今日という日)
Lat dyght messangers ӡare (cause something to be done messenger quickly  従者を早急に用意させる
Aftir hym forto fare (In order to go to get  迎えに行くために

287の[修正 laye]は288のdayeとの期待された韻律を補う。
D版だけが 皇帝の漠然としたしかし無意識に縁起の悪い言葉 286"He schal come home to thee " (He shall come home to you)に応えて 皇后が夫にどうしてもその日のうちに王子を迎えに行くよう求めた。 古フランス語バージョンA※では皇帝は翌日the following day彼を迎えに行くと約束し、中英語Yグループ(言及してないF版を除く)では皇帝は皇后に彼女は明くる日the next day 彼の息子に会うと言う。

296  Scho purchasede thourugt nigremancye 〜--------304 For brynge the childe to nowt.
古フランス語原典にはnigrimancye ネクロマンシー(降霊術、黒魔術etc.)の言及はない。 C版とR版だけに似たような原文改変がある。 皇后は魔女の助言を得て王子が宮殿に到着してから7日以内に話すように仕向けるという王子の死を考案する。 C版においてこれは本文の前の方に書かれている。すなわちD版にない部分の 愚かな僕がプリンスの事柄を告げ口したので皇妃は妖術師を相談相手にして王子の7日以内の発話と沈黙の奸計をめぐらせた。 その後で皇妃は皇帝に問い質すと王子の存在を認めて彼女に会うことになる。 降霊術は明らかに悪魔の魔法だった。(Richard Kieckhefer : Magic in the Middle Ages 中世の魔法 Cambridge, 1989) そしてこれは詩の最後に彼女が罪を告白するエピソードの意味をなす。 3403行 She is ” Was combird wit fynde of helle (She possessed by an evil spirit with the Devil of hell  彼女はもののけに取りつかれた地獄の悪魔と) ネクロマンサー(死霊術師)が呪文を唱えて呼び出した悪霊 を制御することは困難であり中世の説話例では悪霊自身が嘘つきで信用できない手下として描かれた。 (ibid.p.174 ネクロマンシーに関して 上記のRichard Kienckhefer の本を見て知る,禁じられた儀式、15世紀のネクロマンサーの祈祷書 )(Pennsylvania, 1998) 頭韻体のロマンス William of Palerne『パレルヌのウィリアム』には 魔術と死霊術に精通してる継母も登場する。..... for al þe werk of wicchecraft 魔術 wel ynouӡ che couӡþe/ nede nadde ӡhe namore of nigramauncy 降霊術  to lere...(William of Palerne An Alliterative Romance ed. G.H.V Bunt, Mediaevalia Groningana 6..... 彼女は継嗣のスペインの王子を狼男に変身させる。自分の子供を後継ぎにしたいからだ。