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原書 THE SEVEN SAGES OF ROME (MIDLAND VERSION)
ローマ七賢物語 (ミッドランドバージョン) オックスフォード大学出版 2005

  INTRODUCTION   和訳

41ページ

 ブルンナー博士とキャンベル博士は二人とも共通の写本文の異同や誤りそして共通の加筆と省略に従って 原典を分類しました。そのような校訂主義は中期英語"The Seven Sages"に適用する時 他の中期英語原文を分類するために用いる場合にはそう誤りに陥りがちな一つの体系的方法ではないでしょう。 詩は翻訳です。そして我々は古フランス語原文(A写本)にアクセスして全く危険なくどれが正確そうな解釈でどれが誤訳らしいのかを 確定することができます。
42ページ
ブルンナー博士もキャンベル博士も独自の誤訳(errors)や脱落の可能性に そういう誤りが彼らの分類学説に不利に作用する時を除いて いつも十分な注意を払ったとは限りませんでした。

 最初はキャンベル博士によって提案されブルンナー博士により彼の"the Seven Sages" 版で再公式化された仮説的バージョン y, cr, z, そしてw に有利な証拠は十分合理的に思えます。しかし疑わしいことは、A と Ar が仮説的共通親バージョン(ブルンナー博士の系統図において v) から生じたという結論です。 その推論の証拠としてキャンベル博士は、A と Ar 2写本は古フランス語原文によく(often) 対応しかつ他のすべての中期英語写本にしばしば(often)一致していると言います。彼は5例文を引き合いに出します。 しかしながらこれら全事例に関して A と Ar は、 変改して現存している他の写本原文を作りあげることになった種本 X の本文を保存しているにすぎないとさえいえたかもしれません。 全5例について他のYグループ版本(C, R, F, E, B)はお互いに違う読み物を提供します。 もしもキャンベル博士の示唆するA版とAr版に共通な本文はそれらの唯一の親バージョンvに依存していた、それ だから異詩行が盛られていたという示唆どうりならば、さらにまた我々は、他のYグループ写本間との 多少の一致や原版X読本の共通保存状態の幾断片かを発見できるものと思いましたが、これは真相ではありません。 さらにまた、キャンベル博士の5文例は間違って(erroneous)います。 キャンベル博士はA版とAr版だけに次のような詳細な記述があると主張しました。

Wiӡ riche baudekines ispredde (A l. 2734) Soldier rich precious silk stuff bespread
兵士はすごく高価な絹織物で覆った
wiӡ riche cloþes all byspred (Ar l.2734)   Man rich cloths all bespread
兵士は高価な衣服ですべてを覆った
参照: 詩行の語彙の中で☆baudekinesは古フランス語のbaudekin: ME辞書 a precious silk stuff; 古フランス語写本からそのまま写字したという推理、 ☆ispredde , byspred は、Middle High German: 中期高地ドイツ語(1100-1500年)ME辞書 bespread ; 十字軍を経てヨーロッパ大陸を北上したThe Seven Sages 語源、 ☆その他の単語はOld English: 古英語, Anglo-Saxon,

しかしF版にも上記の詩行はあり幾つかの点においてAよりもArに似かよっています。
In cloþys full ryche he was bespredd (F l.1935) [In cloths full rich he was bespread]
ゆったりとした高価な衣服に彼は覆われていた。

{この部分について 翻訳の解釈加筆: 特に語彙比較ならば Ar版とF版が古中期英語特有の文字 þ を用い "cloþes" "cloþys" で一致しているのに対して A版は古フランス語 "baudekin"を借用語あるいは直訳語として使い "baudekines" である。 だからこの例ではA版とAr版は中期英語共通種本vから派生したという仮説はむしろ成り立たない。 introductionの筆者は、42ページ冒頭でキャンベル博士もブルンナー博士も誤りが彼らの分類を裏づけない場合を除いて 独自の誤り(error)の可能性に留意しなかったと述べていましたが、キャンベル博士の研究例文なので A版と Ar版、F版の語彙の違いは写字生たちが己が翻訳を主張 しているのではなくそれ以外の類似点によって中期英語共通種本vの系統図仮説は成り立つということでしょうか?}

キャンベル博士は共通文字エラーの語形をなしているもっと重要な証拠を提示します。 イエスの第12物語 "Vidua" の一節において A版とAr版は、"the wife was cut in the wombe (belly)" 「妻は腹を切られた。」古フランス語版と中期英語E版とB版は"the thumb"「親指を切られた。」 中期英語C版とR版は、"finger"「指を切られた。」 中期英語F版は、"hand"「手を切られた。」 中期英語D版は、明記なし。

{ 参照: 原文比較(翻訳者)
A版: þe kniӡt his wif in þe wombe carf,
ナイトは彼の妻の腹を切った。 (The knight his wife in the stomach cut,)
E版: The knyght ys wyf thombe carf,
  ナイトは彼の妻の親指を切った。 (The knight his wife thomb cut,)
B版: His wyfes thombe þerwith he kytte, 彼の妻の親指をそこで彼は切った。
( His wife's thomb therewith he cut,) 
C版: A litel in hir fynger he share.  彼女の小指を彼は切った。
( A little in her finger he cut. )
D版:The schyref woundyt hys wyf, 代官は彼の妻に傷を負わせた。
( The sheriff wounded his wife, )
R版:この行の原文は"The Seven Sages of Rome" EETS出版本に載っていない。
F版:hand EETS出版 Jill Whitelock ジル・ホワイトロック博士編集本"(Midland Version)原文の説明的ノートによればF版の長いシーンで『妻は 西洋なしの皮をむいているうちに自らを傷つけた」とある。
古フランス語散文バージョンA:the thumb 上記ノートに事故が起きる時夫は一本の矢を作っているという説明文がある。}

43ページ

まだこの共通変異形は各々独自に起こり得る現象でした。 彼はまた、王妃の第7物語"Senescalcus"においてA版とAr版だけが古フランス語版を保っていることに気づきました。 それは女性を手に入れるためには王に20マルク払うと言わせる描写です。
{ 原文参照(翻訳者)
Karl Brunnerブルンナー版本文A:Bihot twenti mark som leuedi (l.1579) 20マルクをだれか淑女に約束する ( Promise 20 marks some lady)
Ar版:xx marke to a loteby   (l.1579)  20マルクを愛人に
( 20 marks to a lover ) }

それでもEは類似です。
E版:Take xx pounde and spare nought  (l.1579)  20ポンド受け取りなさい何も惜しまない
( Take 20 pounds and spare nothing )

{ 原文参照(翻訳者)
Ar版:To nyӡt to ber me company  (l.1580)   今夜私の所へ伴侶を連れて来る
(  Tonight to bear me company)
E版:Soo that a woman to me be brought  (l.1580)  従って一人の女が私の所へ連れて来られた。
(  So that a woman to me be brought)
語彙比較
Ar版:company: ME辞書:compaignie, 古フランス語, 現代フランス語の compagnie
E版:woman: ME辞書:wif-man, 古英語、 }

たぶんポンドはマルクの自然な代用語です。 そしていずれにせよA版とAr版が古フランス語を最もよく保存しているという事はこの点で、A(羊皮紙、前ページ訳参照) とAr()を書いた写字生達が一冊の唯一の共通種本(系統図 v)を持っていたかどうかの証明にもなりません。 何故ならこの例もやはり写字生達はそれぞれの原典をもって関係なくAとArを書き上げることもできたのですから。

 ブルンナー博士はさらに、彼の編集した本の第4物語 "Medicus" 1070行に共通の誤りを記載しました。
A版:þis enderdai, in on Aueril,  この4月、先日でした。(過ぎ去った昔4月の今時分でした。)
(  This last past day in on April,)
Ar版:.....oþer day,    先日
(  .....other day )
E and B版: ....othyr yere,   先年
F版:.......odur yere, (l. 1894)
( .......other year )
R and C版:þis es twelft ӡere in Auerell 『これは4月で12年目になりますが、金子健二氏訳』
( This is twelfth year in April )
古フランス語版A とD版は年月を指定してありません。

第4物語においてこの時の話者はハンガリーの王女で彼女は妊娠という結果になった彼女の不倫を打ち明けているので A版とAr版の読み方は誤りであると思われます。 このシーンで重病に臥せっていた王女の息子、王子はもはや赤ん坊ではないのでその出来事は先日 (oþer day )よりはむしろ先年(othyr yere) 起こったの方が確かです。またもやまだ、第12物語"Vidua"の例”thumb" 親指を"wombe" 腹に置き換えるような共通な誤謬はよくあることで 共通種本とは無関係に生じたかも知れません。

 キャンベル博士はAr版が時にはA版に反してE版とB版に一致していることを認めます。
A版:He was a clarke of gret ffame. (l. 56)  彼は大変高名な学者だった。
( He was a clerk of great fame.)
E版:A better clerke was non of fame. より優れた学者というものはだれも有名ではなかった。
( A better clerk was none of fame.)

{(翻訳者) E版の語順を変えると:A clerk was of fame, none better(than he).評判のよい学者だった、だれよりもよく。 nonを現代英語noneと置き換えると文の意味はA版と同じになります。}
キャンベル博士が認めたAr版とE版の一致例は、王妃の第7物語 "Senescalcus" 執事の王の台詞です。 Ar版とE版には、(キャンベル博士はBもとは主張するものの間違っています。)王が女性を尊ばんと言う共通した誤りがあります。 A,B,C,R版そしてD版では、古フランス語バージョンに正しく忠実に従って、王は女性を憎んでいたと言うのです。 キャンベル博士は、これらの一致はA版とAr版は煙滅した中期英語v写本を共通種本とするとした彼の分類に矛盾するのではなく、 こういった詩行のある場合に示しているのは、Arは最善にオリジナルを保存しながらその独立はA版の"the poet"詩人よって 強く主張されているのだと推断しました。そんな説明はここに挙げた例にとってとても満足のいくものではありませんが、A版(andB版)はおそらく 独立を主張することよりも古フランス語原書と同じ読み方をしているらしいので、共通異文のあるのはAr版とE版です。 当然、この共通詩行は無関係に現れることもあり得たのですが、キャンベル博士とブルンナー博士は彼らの分類(前ページ参照) にその共通異文の証拠が不利に作用する時(A=古フランス語、Arは古フランス語でなく、Eは古フランス語でない、Ar=Eが共通異文のような例) その証拠をしりぞけ、ところが彼らは原文を分類体系に有利に判読する時その証拠を認めるということは全く価値がないのです。 (上記例では、イエスの第12物語"Vidua"において、 古フランス語バージョン"thumb"親指の代わりに AとArの写字エラー或は訂正して読んだ共通誤訳"wombe"腹、(この場合、 Old French=E, EはA, Arではない、A,Arは古フランス語バージョンではない共通エラー)
こんな扱いにくい二つの異文を記載してしまったけれども、ブルンナー博士は上述の前提を論破するように思われる 他のすべての反証的異文のとおりに、そのような異文は系統や類似点と無関係に発生したとはもっともらしいと 彼の説を言いはります。

Ar版とE版の一致例について

Karl Brunner,Ph.D.編集版 1553行:
Wimmen he louede swiþe lite,  彼は女性達を多少とも激しく愛した、
(Women he loved strongly a little,)

Jill Whitelock博士編集の"The Seven Sages of Rome" (Midland Version)原文解釈ノートP.123 第7物語 ”The Seneschal”「執事」 D版1517行
That hatyd wymmen of alle thyng; よりによって女性達を嫌った、 (※第7物語冒頭参照)
(That hated women of all things;)

A版とB版だけは王の男色sodomy好みに言及しているフランス語バージョンに従った。そうとしても A版の写字者は、その語を誤解したか、sodomiӡte(l.1554 MS so do miӡte:そう する 力) と文字を書くことによってそのフランス語に見せかけたかのいずれかだ。 Ar版とB版は間違って王は女性達を愛した又はそれぞれ女性達を大いに楽しんだと言う。